「精神の障害年金」と「就労」の関係

精神の障害の方が就労すると、障害年金の支給はどうなるのでしょうか?
ここでは精神の障害年金(統合失調症、うつ病、知的障害、発達障害)と就労の関係について解説いたします。

障害年金認定基準では

障害認定に当たっての基本的事項として、障害の状態の基本は次のように記載されています。※2級程度
「必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの」
次に、精神の障害と就労との関係では次のように記載されています。
「労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること」

精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは

障害認定基準を補足するものとして、平成28年9月より「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が運用されています。このガイドラインにより、障害等級の判定時に考慮すべき事項の例が次のように示されています。

精神の障害と就労についての共通事項

考慮すべき要素 具体的な内容例
労働に従事していることをもって、 直ちに日常生活能力が向上したものと 捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する。
援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する。
相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。
  • 就労系障害福祉サービス(就労継続 支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。
  • 障害者雇用制度を利用しない一般企 業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。
就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する。
一般企業(障害者雇用制度による就労を除く)での就労の場合は、月収の状況だけでなく、就労の実態を総合的にみて判断する。

精神の障害

考慮すべき要素
安定した就労ができているか考慮する。1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。
発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況を参照しつつ、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無などの状況を考慮する。
精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する。
仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する。

知的障害

考慮すべき要素 具体的な内容例
仕事の内容が専ら単純かつ反復的な業務であれば、それを考慮する 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する。
仕事場での意思疎通の状況を考慮す る。 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。

発達障害

考慮すべき要素 具体的な内容例
仕事の内容が専ら単純かつ反復的な 業務であれば、それを考慮する。 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、 仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する。
執着が強く、臨機応変な対応が困難である等により常時の管理・指導が必要な場合は、それを考慮する。 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、 執着が強く、臨機応変な対応が困難で あることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。
仕事場での意思疎通の状況を考慮する。 一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、 他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられることなどにより、常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。

就労=不支給という制度ではない

上記のように障害認定基準には、就労していると「不支給である」という記載はありません。
知的障害や発達障害の場合、仕事をするために周囲から多くのサポートが必要で、ただ単に就労していることで日常生活能力が向上しているとはいえないということです。就労先が就労支援施設であっても一般企業であっても、その仕事の内容や周囲からのサポートがあってようやく就労ができているならば、年金が支給されないということではないのです。
それでは、統合失調症等やうつ病等の場合はどうでしょうか。
障害認定基準の基本的基準では「労働により収入を得ることができない程度のもの」つまり、仕事ができないような病状であるとされています。ただ、所得の支えがなく、病気を抱えながら無理をしてでも就労しているという方もいらっしゃいますので、障害年金の認定にあたっては、現時点で働いているかどうかよりも労働能力がどうなのかが問題となるのです。

就労に関して障害年金の審査では

精神の障害の場合、他の疾病のような病気の程度を表すような数値的な指標がないため、日常生活能力や就労状況などで年金の等級を判断しています。そのために、就労していることだけで日常生活能力があると見られたり、障害の状態が軽くなっていると判断されることがあります。

また、親族等が経営している会社などで形だけの就労であったにも関わらず支給停止とされたり、それとはフルタイム就労でも2級となったケースもあります。

つまり、障害年金の審査では就労に関して統一した基準がある訳ではないのです。

障害年金請求時の対応方法

統合失調症やうつ病で新規請求する場合

厚生年金の被保険者として就労している場合は、2級以上の認定は難しいといえます。

病状が悪化して休職を考えているなら、健康保険制度から傷病手当金を受給します。

傷病手当金の受給期間は1年6ヵ月が限度です。受給期間が終了するまでに復職できない場合は障害年金の請求を考えましょう。

3級の認定を考えているなら等級判定ガイドラインを参考にします。

現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無、出勤状況(欠勤、早退、遅刻など)、意思疎通に困難な状況などの就労の実態などを病歴・就労状況等申立書や就労状況についての申立書を別途作成して、審査側に伝えましょう。

病気のことを会社側にオープンにして就労しているなら、上司や同僚に協力を求めるのも良いと思います。

発達障害や知的障害で新規請求する場合

仕事の内容や仕事場で受けている援助の内容、他の職員達との意思疎通の状況などにより2級の認定は可能だといえます。ただし、漫然と請求すると認定は難しいといえますので、次のような準備をしたいものです。

  • 診断書作成時に医師に就労状況を伝えておく
  • 病歴就労状況等申立書に就労状況等を記載する
  • 就労状況について別に申立書を作成する

障害年金は実地調査などなく書類審査です。

就労状況についていかに審査側に伝えるのか重要になるのです。

障害年金更新時の対応方法

基本的には新規請求時と同じです。更新時は「障害状態確認届」という名の診断書のみの提出になりますが、例えば、次のような書類を同時に提出しても断られることはありません。

  • 請求時(前回の更新時)から更新時までの期間の病歴・就労状況等申立書
  • 就労状況について申立書
  • 上司や同僚などの就労状況についての申立書

これら就労状況についての申立書を作成して一緒に提出します。

更新時でも就労状況についていかに審査側に伝えるのか重要になります。

障害年金は書類審査です

精神の障害年金と就労の関係についての次のような質問を受けることがよくあります。
  • 「就労していると障害年金は支給されない?」
  • 「障害年金を受給中に就労すると更新時に不利になる?」
  • 「更新時に就労していると障害年金は停止される?」
就労と一口で言ってもそれぞれの方で働き方は異なります。
例えば、就労能力を改善するために訓練している場合もあります。休職から復職に向けて準備するための慣らし期間での就労の場合もあります。また、傷病を抱えながら、家族のためにと有給休暇や欠勤を繰り返している場合もあります。
単純に、就労しているから障害年金は支給されないというものではなく、どのような就労状況なのか、請求傷病は何か、厚生年金か国民年金のどちらの年金制度か、などで変わってくるのです。
障害年金は請求者や会社などの元へ直接訪問して詳しく就労の状況などを調査することはなく、すべて書類上の審査になります。つまり、傷病によりどのように就労や日常生活に支障が出ているのかを詳細に伝える必要があるのです。

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