知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金の請求を代行

精神の疾患は多種多様で、例えば、知的障害や発達障害とうつ病などの他の精神疾患が併存しているケースがよくあります。この場合、同一疾患と見なされるか別疾患とされるかで初診日の扱いが大きく異なることになります。ここでは、精神疾患が併存している場合に、障害年金の初診日はどのように取り扱われているのかを詳しく解説いたします。

障害認定基準

知的障害や発達障害、うつ病などの精神疾患が併存している場合、障害認定基準の認定要領には、「併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。」とされています。

具体的な取扱いについては、厚生労働省の疑義照会に記載されており、障害の特質性から初診日及び障害状態の認定契機についての認定に当たっては、次の目安を基準に、発病の経過や症状から総合的に判断されます。

精神疾患が併発している場合の取扱い

  1. うつ病や統合失調症と診断されていた者に後から発達障害が判明するケースについては、そのほとんどが診断名の変更であり、あらたな疾病が発症したものではないことから別疾患とせず「同一疾患」として扱う。
  2. 発達障害と診断されていた者に後からうつ病や神経症で精神病様態を併発した場合は、うつ病や精神病様態は、発達障害が起因して発症したものとの考えが一般的であるから「同一疾患」として扱う。
  3. 知的障害と発達障害は、いずれも20歳前に発症するものとされているので、知的障害と判断されたが障害年金の受給に至らない程度の者に後から発達障害が診断され障害等級に該当する場合は、原則「同一疾患」として扱う。
    例えば、知的障害は3級程度であった者が社会生活に適応できず、発達障害の症状が顕著になった場合などは、「同一疾患」とし、事後重症扱いとする。なお、知的障害を伴わない者や3級不該当程度の知的障害がある者については、発達障害の症状により、はじめて診療を受けた日を初診とし、「別疾患」として扱う。
  4. 知的障害と診断された者に後からうつ病が発症した場合は、知的障害が起因して発症したという考えが一般的であることから「同一疾患」とする。
  5. 知的障害と診断された者に後から神経症で精神病様態を併発した場合は「別疾患」とする。
    ただし、「統合失調症」の病態を示している場合は、統合失調症が併発した場合として取り扱い、「そううつ病(気分(感情)障害」の病態を示している場合は、うつ病が併発した場合として取り扱う。
  6. 発達障害や知的障害である者に後から統合失調症が発症することは、極めて少ないとされていることから原則「別疾患」とする。
    ただし、「同一疾患」と考えられるケースとしては、発達障害や知的障害の症状の中には、稀に統合失調症の様態を呈すものもあり、このような症状があると作成医が統合失調症の診断名を発達障害や知的障害の傷病名に付していることがある。したがって、このような場合は、「同一疾患」とする。

初診日の取扱い

精神疾患が併存している場合、両者が同一疾患と見なされるのか、それとも別疾患と見なされるかによって、初診日の取扱いが変わってきます。知的障害の初診日は出生日とされていますが、発達障害や他の精神疾患の初診日は、初めて医療機関を受診した日となるからです。

疑義照会から初診日の認定は以下のようにされます。

前発障害 後発障害 判定 初診日の取扱い
発達障害 うつ病 同一疾患 発達障害で初めて医師の診療を受けた日
発達障害 神経症で精神病様態 同一疾患 発達障害で初めて医師の診療を受けた日
うつ病・統合失調症 発達障害 診断名の変更 うつ病や統合失調症で初めて医師の診療を受けた日
知的障害(軽度) 発達障害 同一疾患 出生日 ※ 知的障害が3級不該当程度の場合は、発達障害で初めて医師の診療を受けた日
知的障害 うつ病 同一疾患 出生日
知的障害 神経症で精神病様態 別疾患 出生日または神経症で初めて医師の診療を受けた日
知的障害・発達障害 統合失調症 前発疾患の病態として出現している場合は同一疾患(確認が必要)
知的障害・発達障害 その他精神疾患 別疾患 出生日またはその他精神疾患で初めて医師の診療を受けた日

最後に

初診日分かりますか

厚生労働省の疑義照会で例示されているケース以外にも、精神の疾患は多様で複雑なため、様々なケースが考えられます。弊所が扱った事例の中でも、上記の例示通りにはいかず、初診日の判断に迷うこともあります。厚生労働省の疑義照会の回答はあくまでも参考にし、複数のケースを想定しながら請求を進めていく必要があります。

障害年金を請求する際は、必要な知識を把握した上で、年金事務所に足を運び、正しい手順で手続きを進める必要があります。障害年金の手続きは複雑で、一般の方には分かりにくい点も多いため、不安や疑問がある場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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