身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳と障害年金 | かなみ社会保険労務士事務所
身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別の制度で、対象となる傷病も制度間で異なっています。
ここでは、各種障害者手帳と障害年金の関係を解説いたします。
身体障害者手帳と障害年金
身体障害者手帳と障害年金の関係でよくある誤解
障害年金の請求(申請)書類の「病歴・就労状況等申立書」に、身体障害者手帳の取得に関する記載項目があるため、身体障害者手帳と障害年金の関係で誤解される方が多いのではと思います。
2つの制度間で等級が同じだと思っている
「私の身体障害者手帳は4級だから障害年金は受給できない」と誤解している方がいらっしゃいました。
しかし、両制度はまったく別のもので、基準も異なりますので、「身体障害者手帳の等級=障害年金の等級」となるわけではありません。
身体障害者手帳が4級であっても、状況により障害年金を受給できる可能性はあります。
例えば、心臓ペースメーカーを入れた場合、身体障害者手帳では原則1級、ペースメーカーへの依存度などにより3〜4級とされているのに対し、障害年金では3級以上となります。
また、股関節へ人工関節を入れた場合、身体障害者手帳では4、5、7級または非該当となりますが、障害年金では3級以上となります。
障害年金の場合、その傷病により、日常生活に著しい支障が出ているのであれば、請求することで障害年金を受給できる可能性があるため、身体障害者手帳の等級は関係ありません。
身体障害者手帳がなければ障害年金を請求(申請)できないと思っている
身体障害者手帳と障害年金は別の制度です。
身体障害者手帳がなければ障害年金を請求(申請)できないということはありません。
身体障害者手帳の等級に合わなかった人でも、日常生活や労働に著しい支障が出ている場合には、障害年金を受給できるのです。
療育手帳と障害年金
療育手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される手帳です。
療育手帳制度は、各自治体において、判定基準等の運用方法を定めて実施されています。
兵庫県の場合、精神面(知能指数IQ)、生活面、行動面、看護面などにより、次の表のように、A(重度)B1(中度)B2(軽度)に区分されています。
療育手帳と障害年金の関係でよくある誤解
軽度知的障害だから障害年金を受給できないと誤解されている方がいらっしゃいます。
障害年金では知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案され、総合的に判断されますので、軽度であっても日常生活に著しい制限を受けている場合には障害年金が支給されるケースもあります。
軽度知的障害で障害年金の請求(申請)をサポートした事例
Aさんの事例(WAIS-III 言語性IQ61 動作性IQ63 全IQ59)
生下時より精神遅滞であったものの家族や周囲は気付くことなく成長した。
小中学校は普通学級で過ごしたが、勉強が分からず、学校へはほとんど行っていなかった。
中学卒業後に就職したがすぐに退職。その後は常に他人の庇護の元で生活を送っていた。
35歳を過ぎて結婚。配偶者が夫は精神遅滞ではないかと感じ、検査を受けさせたところ軽度精神遅滞であると分かった。
Bさんの事例(WAIS-III 全IQ60)
幼少期から理解力や行動の遅さがあり、小学校の低学年から勉強についていけなかった。
婚姻後、家事や子育てがうまくできず、実家の母親に手伝ってもらうなどの支援を受けていた。
結婚生活(家事)がうまくいかず、離婚することになった。
離婚後は、実家の支援を受けているとはいえ、一人で子育てを行っており、日常生活への支障の困難さが評価されない可能性があった。
このため、請求時は「軽度精神遅滞」の障害の程度を中心に、日常生活の困難さを詳細に伝え、障害福祉サービスの利用状況などを参考資料として提出した。(障害基礎年金2級)
Cさんの事例(WAIS-III 全IQ68)
小中学校、高校は普通学級で勉強をしていたが成績は常に下の方だった。
高校を卒業後は工場でフルタイム就労をしていたが、仕事が覚えられず、簡単な機械操作以外はできず、常に上司から叱責され、最後には呆れられるようになっていた。
幼少期から数字が苦手で計算ができず、仕事も日常生活もうまくできないのは何か障害があるのではと思って病院を受診。
発達検査を行ったところ発達障害であり、軽度精神遅滞だと分かった。
医師からは、発達障害よりも精神遅滞の方で日常生活に支障が出ているため、精神遅滞で診断書を記入するとのことだった。
病歴・就労状況等申立書では、就労していた頃の状況を細かく申立てた。(障害基礎年金2級)
精神障害者保健福祉手帳と障害年金
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患のある方が6か月以上にわたって日常生活や社会生活に支障がある場合に交付されるものです。
精神障害者保健福祉手帳には1級、2級、3級の等級があり、1級が最も障害の重い等級になります。
精神障害者保健福祉手帳の対象となる主な病名は、統合失調症、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、てんかん、高次脳機能障害、発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害)などがあります。
障害年金では認定の対象外となっているパニック障害や摂食障害なども対象になっています。
精神障害者保健福祉手帳の法律施行令と障害年金の障害認定基準
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令
等級 | 精神障害の状態 |
---|---|
1級 | 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
障害年金 障害認定基準
等級 | 精神障害の状態 |
---|---|
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
精神障害者保健福祉手帳と障害年金の関係でよくある誤解
精神障害者保健福祉手帳と障害年金は同じ等級にはならない
精神障害者保健福祉手帳を持っている方が障害年金を請求(申請)しても、精神障害者保健福祉手帳と同じ等級になるわけではありません。障害年金は診断書等によって改めて審査を受ける必要があるからです。
その結果、精神障害者保健福祉手帳と異なる等級で障害年金が決定される可能性はあります。
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