障害年金の障害認定日の原則と特例 | かなみ社会保険労務士事務所

障害年金の障害認定日とは、障害の状態を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6か月を過ぎた日、または1年6か月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日とされています。ここでは、障害認定日の原則や特例について具体例をまじえて解説いたします。

障害認定日の原則

障害認定日とは、「障害の程度の認定を行う日」とされ、障害認定日に一定の障害状態が認められると、その翌月から障害年金が支給されることになります。

この障害認定日は原則として、障害年金を申請(請求)する傷病の初診日から起算して1年6か月を経過した日とされており、例えば、初診日が令和2年2月10日の場合には、障害認定日は1年6か月経過した日の令和3年8月10日となります。

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20歳前傷病の障害認定日

障害認定日は原則として、障害年金を申請(請求)する傷病の初診日から起算して1年6か月を経過した日とされていますが、20歳前に初診日がある障害年金の場合、障害認定日は初診日から起算して1年6か月とならない場合があります。

知的障害の場合

知的障害(精神遅滞)は先天性の障害であるため、初診日に関わらず、障害認定日は20歳到達日(20歳誕生日前日)になります。20歳前に初診日のある方でがも、20歳以降に初診日がある方も障害認定日は20歳誕生日前日になります。

 

18歳6か月前に初診日がある場合

障害年金を申請(請求)する傷病の初診日が18歳6か月よりにある場合、1年6か月を経過した時点では20歳に達していません。このため、障害認定日は20歳到達日(20歳誕生日の前日)になります。

 

18歳6か月後に初診日がある場合

障害年金を申請(請求)する傷病の初診日が18歳6か月よりにある場合、1年6か月を経過した時点で既に20歳に達しています。このため、障害認定日は原則通り初診日から起算して1年6か月を経過した日になります。

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障害認定日の特例

障害認定日は、障害年金を申請(請求)する傷病の初診日から起算して1年6か月を経過した日が原則とされていますが、1年6か月前にその傷病が治った場合(症状が固定した場合)は、その日が障害認定日とされています。

 

治った場合(症状が固定した場合)とは

障害年金における「治った(症状が固定した場合)」とは、その症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含むこととされており、「器質的欠損もしくは変形または機能障害を残している場合は、医学的に傷病が治ったとき、または、その症状が安定し、長期にわたってその疾病の固定性が認められ、医療効果が期待しえない状態に至った場合」とされています。

 

初診日から1年6か月前に障害認定日として取り扱われるもの

障害認定基準等で、初診日から起算して1年6か月を経過する前に障害認定日として取り扱われるものは、次のようなものがあります。

傷病が治った状態 障害認定日
人工透析療法を行った場合 人工透析療法を開始した日から起算して3か月を経過した日
人工骨頭または人工関節をそう入置換した場合 そう入置換日
人工弁、心臓ペースメーカー、ICD、CRT、CRT-D、人工血管(ステントグラフトを含む)を行った場合 装着日、挿入置換日
人工肛門の造設、尿路変更術を施術した場合 造設または手術を施した日から起算して6か月を経過した日
新膀胱を造設した場合 新膀胱を造設した日
肢体を切断や離断した場合 原則として切断日や離断日(障害手当金の場合は創面が治癒した日)
咽頭全摘出の場合 全摘出した日
在宅酸素療法を行っている場合 初診日より6か月経過した日以降に、医学的観点からそれ以上の機能回復がほとんど望めないと認められないとき

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障害認定日の具体例(人工関節)

事例1 初診日から1年6か月以内に人工関節の置換手術を行った場合

初診日はA整形外科を受診した2020年1月28日であり、初診日から約9か月後(2020年10月20日)に人工関節のそう入置換手術を受けている。本来の障害認定日は初診日から1年6か月経過した日の2021年7月28日であるが、人工関節のそう入置換によって「治った(症状固定)」とされるため、2020年10月20日が障害認定日となる。

 

事例2 初診日から1年6か月以降に人工関節の置換手術を行った場合

初診日はA整形外科を受診した2020年1月28日であり、障害認定日は初診日から1年6か月経過した日の2021年7月28日である。障害認定日では障害の状態ではなかったが、その後に関節の状態が悪化し、2022年4月8日に人工関節のそう入置換手術を受けた。この場合、障害認定日には受給権は発生しないため、事後重症請求となり、障害年金を申請(請求)した翌月分から障害年金が支給されることになる。

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障害認定日の具体例(人工透析)

事例3 糖尿病が原因で腎不全(人工透析療法)となった場合

会社の健康診断で高血糖になっていることを指摘された。2010年2月10日、A内科で糖尿病であると診断された。医師から適度な運動と食事に注意するように指示され、血糖値を下げる薬が処方されるようになった。A内科に定期的に通院していたが、2020年頃から尿蛋白が高い値になり、B市立病院を紹介された。

2020年2月4日、B市立病院を受診して検査を受けたところ、クレアチニン数値が悪化していることがわかり、「人工透析の治療を視野に入れておく必要がある」と言われた。

2020年5月7日、呼吸苦によりC病院に救急機送。心不全、胸水であると診断され、「人工透析が必要な状態である」と言われ、2020年5月27日より人工透析療法が開始された。

腎不全(人工透析)になった原因が糖尿病である場合、糖尿病と腎不全は相当因果関係があるとされ、腎不全の初診日は、糖尿病の初診日とされる。このため、糖尿病で受診した2010年2月10日が障害年金の初診日となり、障害認定日は1年6か月後の2010年8月10日となる。障害認定日に障害の程度でなければ障害年金は支給されず、その後障害の程度に該当するに至った日から障害年金は支給されることになる。2020年5月27日に人工透析療法が開始されているため、障害年金を申請(請求)した場合は、申請(請求)月の翌月分から障害年金は支給されることになる。

 

事例4 初診日から1年6か月以内に人工透析療法が開始された場合

2017年頃より会社の定期健康診断で血圧が高いと指摘されていた。2019年4月から重だるく、仕事をするのもままならないような状態になった。2019年5月8日、A病院を受診して血液検査を受けたところ、重症高血圧症と腎機能障害を指摘され、薬物療法が開始されることになった。2019年末頃から風邪(咳や痰)のような症状が続いていた。2020年1月、会社に出勤したものの、倦怠感が酷くて仕事をすることができなかった。会社を早退してA病院を受診して検査を受けたところ、すぐに人工透析が必要になる状態だと言われ、2020年1月11日より人工透析療法が開始された。

障害認定日の原則は、初診日から1年6か月を過ぎた日となっているが、1年6か月以内に症状が固定した場合はその日が障害認定日とされる。初診日から1年6か月以内に人工透析療法を行った場合、人工透析療法を開始した日から起算して3か月を経過した日が症状固定とされている。

腎不全の初診日は2019年5月8日であり、人工透析療法は初診日から約7か月後の2020年1月11日より行っている。このため、障害認定日は人工透析療法を開始した日から起算して3か月を経過した日(2020年4月11日)が障害認定日となる。

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ご不安な方は障害年金の専門家への相談をしましょう

実際に障害年金を申請(請求)する際には、障害年金に関する知識を抑えた上で、年金事務所へ足を運び煩雑な処理を正しい手順で進めていく必要があります。

障害年金は複雑で一般の方には難しい点も多々あります。不安や分からないことがある場合は、障害年金を扱っている専門家(社会保険労務士など)に相談しましょう。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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