病歴・就労状況等申立書の記入方法 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金申請(請求)を代行
「病歴・就労状況等申立書」は、障害年金を請求する際に必要な書類で、請求者が、自らの病歴や日常生活状況や就労状況などを詳しく記載するもので、発病から初診日までの経緯や障害の状態を確認するための重要な補足資料となります。
ここでは、「病歴・就労状況等申立書」の記入方法や注意点などについて詳しく解説いたします。
病歴・就労状況等申立書の役割
「病歴・就労状況等申立書」は、障害年金の請求において以下のような役割を果たす書類です。
- 初診日までの状況を確認するための資料
障害年金は、初診日時点で加入していた年金制度(国民年金や厚生年金など)によって、請求できる障害年金の種類(障害基礎年金・障害厚生年金)が異なり、また、保険料納付要件や障害認定日を確定させるためにも重要とされています。
「病歴・就労状況等申立書」は、発病から初診日までの状況を確認するための参考資料とされます。 - 障害状態の確認
「病歴・就労状況等申立書」は、治療内容や症状の経過、日常生活や就労状況などを詳しく記載するため、障害の状態を審査する際の補足資料となります。
障害の程度を認定するための資料は「診断書」ですが、「病歴・就労状況等申立書」も障害認定のための役割をもっています。
病歴・就労状況等申立書の記載要領
「病歴・就労状況等申立書」の記載要領には以下のように記載されています。
病歴・就労状況等申立書(表面)
- 発病日・初診日
「受診状況等証明書」や「診断書」に記載されている発病日・初診日を記入します。
知的障害(精神遅滞)の場合は出生日を記入します。 - 傷病名
「診断書」に記載されている傷病名を記入します。 - 病歴
発病から現在までの経過を年月順に期間をあけずに記入します。
同じ医療機関に長く通院している場合や、通院していない期間が長い場合は、3〜5年ごとに区切って記入します。
受診していた期間は、治療の経過、医師からの指示、その時の病状や日常生活・就労状況などを記入し、受診していない期間は、その理由や、自覚症状の程度、日常生活・就労状況などを記入します。
病歴・就労状況等申立書(裏面)
- 障害認定日の頃の状況
障害認定日による請求を希望する場合に記入します。 - 現在(請求日頃)の状況
事後重症による請求を希望する場合や、障害認定日による請求を希望する場合で、障害認定日と請求日が1年以上離れている場合は、「障害認定日の頃の状況」と「現在(請求日頃)の状況」の両方を記入します。 - 就労状況
飲食店で接客業務や工事現場で交通誘導員、派遣先でデータ入力業務など、仕事の内容を具体的に記入します。通勤方法や通勤時間、出勤日数、仕事中や仕事が終わった時の身体の調子について記入します。就労していなかった場合は(ア)〜(エ)の中から就労していなかった理由を選択し、休職中だった場合は(オ)に理由を記入します。 - 日常生活状況
日常生活においてどのくらいの不自由さを感じているかを記入します。 主治医に確認する必要はありません。
病歴・就労状況等申立書の記入時のポイント
「病歴・就労状況等申立書」を記入する際は、以下のようなポイントがあります。
病歴
- 生来性の知的障害の場合は、1つの欄の中に、出生時から現在までの状況をまとめて記入することが可能とされていますが、原則通りに3~5年ごとに区切って記入していく方がよいと考えます。「出生から小学校入学まで」「小学校」「中学校」「高校」と期間を区切った方が分かりやすいでしょう。
- 先天性疾患の場合で、医療機関を受診していなかった場合には明確に伝えておきましょう。
- 障害認定日請求を行う場合、1つの欄に障害認定日頃の病状や日常生活状況、就労状況を記入するのもよいでしょう。
- 「病状が大きく変化した」「入院した」「就労していたが病状の悪化により退職することになった」など、大きな変化があった場合は、その期間ごとに区切って記入します。
社会的治癒を主張する場合
社会的治癒とは、「症状が安定して特段の治療の必要がなくなり、社会生活が長期間可能である場合」をいいます。社会保険の運用上、傷病が医学的には治癒に至っていない場合でも、予防的医療を除き、その傷病について医療を行う必要がなくなり、相当の期間、通常の社会活動や日常生活が可能な場合は、「社会的治癒」とされます。この場合、医学的な治癒と同様に扱い、再度新たな傷病を発病したものとして取り扱うとされており、障害年金の請求者が「社会的治癒」であると主張し、「診断書」や「病歴・就労状況等申立書」の内容によって個別に判断されることになっています。
社会的治癒を主張する場合、「病歴・就労状況等申立書」には、「再発前」と「再発後」の2枚に分け、社会的治癒に主張する期間の日常生活状況や就労状況などを記入していきます。
就労状況・日常生活状況
障害の程度の認定は「診断書」に基づいて行われており、「病歴・就労状況等申立書」の内容は、障害の程度の認定には大きな影響を与えるものではありませんが、障害年金が不支給となった場合や、決定された等級に不服がでた場合に、「病歴・就労状況等申立書」の記入内容が問題になってきます。
審査請求や再審査請求の決定書(裁決書)では、「病歴・就労状況等申立書」の以下のような記入内容を理由にして棄却(不服を認めない)される場合があるからです。
- 「○○○」と記入されているため、病状は軽減していたと考える
- 精神の障害で、病歴・就労状況等申立書(裏面)の日常生活状況のほとんどが「1(自発的にできた)や2(自発的にできたが援助が必要だった」とされており、障害の程度ではない
- 精神の障害で、就労していない理由が「(エ)働きたかったが適切な職場がなかったから」と記入しており、就労する意欲があるなら障害の程度ではない
病歴・就労状況等申立書でよくある間違い
「病歴・就労状況等申立書」は、障害の原因となった傷病について、発病から初診日までの状況や、症状の経過、日常生活や就労状況などを記入するものですが、次のような間違いが散見されます。
- 診断書等と病歴・就労状況等申立書の内容が不整合
「診断書」や「受診状況等証明書」と「病歴・就労状況等申立書」の内容が一致しない場合、審査で疑問を持たれることがあります。特に、発病日や初診日頃の記載内容が異ならないようにします - 不必要な情報の記載
経済的な困窮や社会への不平不満、請求傷病とは無関係の傷病のことなど、直接関係のない情報を記載することは意味がありません。重要なのは、請求傷病の病状がどのような状態か、それによって日常生活や就労状況がどのように困難になっているかを具体的に伝えることです。 - 誤った表現や誇張した内容
病状を実際よりも重く表現したり、事実を盛ったりすることで、診断書との整合性が取れない場合、申立書全体の信頼性が低下する恐れがあります。
病歴・就労状況等申立書の記入例
最後に
「病歴・就労状況等申立書」は、障害年金の請求において必ず必要な書類であり、記入すべきポイントをしっかり把握することが大切です。ご自分で記入するのがご不安な場合は、専門家である社会保険労務士に相談することをおすすめします。
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