障害年金 受診状況等証明書(初診日証明)の取得方法 | かなみ事務所 - 障害年金専門の社労士が解説

障害年金の制度では「初診日」を基準にして、請求する制度(国民年金・厚生年金)が確定し、初診日の前日までの保険料納付状況を確認されるため、「初診日」は非常に重要になります。ここでは、障害年金の申請(請求)で初診日証明を取得する手順について解説します。

初診日がいつになるか考えましょう

「初診日」とは、障害の原因となった傷病につき、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日とされています。

具体的には次のような日とされています。

  • 初めて医師の診療を受けた日
  • 同一傷病でも転院があった場合は、一番最初に医師の診療を受けた日
  • 過去の傷病が治癒し、その後に再発した場合は、再発後に初めて医師の診療を受けた日
  • 確定診断がされていない場合でも、請求傷病と同一傷病であると判断できる場合は、最初の傷病名で初めて医師の診療を受けた日
  • 障害の原因となった傷病よりも前に、相当因果関係があると認められる傷病がある場合は、最初の傷病で医師の診療を受けた日

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初診日の具体的な事例

「初診日」は必ずしも診断名が確定した日ではなく、体調に異変を感じて初めて病院を受診した日とされています。

ここでは、弊所がこれまで取り扱った「初診日」の事例を紹介します。

「初診日」は障害年金の申請(請求)で非常に重要になります。

判断に迷ったり悩んだりした場合は、年金事務所や社会保険労務士に相談するようにしましょう。

初診日の事例1 初診日傷病名:偏頭痛・耳鳴り 請求時傷病名:うつ病

上司からモラルハラスメントやパワーハラスメントが続いていた。会議中に、社員全員の前で吊るし上げられ、怒号が響き渡り、人格を否定するような言葉も掛けられていた。

ストレスを強く感じた時や、疲労が蓄積した時などに耳鳴りがしていたが、しばらくすると治まっていたので病院を受診することはなかった。次第に、耳鳴りと同時に鈍い頭痛が続くようになったため、脳神経外科を受診した。頭部CT検査や耳の検査を行ったが異常はなく、精神疾患の可能性があると言われた。

 

初診日の事例2 初診日傷病名:偏頭痛・左肩関節症 請求時傷病名:急性リンパ性白血病

左肩の筋肉痛のような痛みから、背中に我慢できないぐらいの痛みへと広がった。
鎮痛剤を服用しても痛みは治らず、腕まで痺れるようになったので、整形外科を受診した。

レントゲンを検査をしたが異常はなく、鎮痛剤を処方された。

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受診状況等証明書を取得する

障害年金で「初診日」を証明する書類が受診状況等証明書」です。

「受診状況等証明書」の作成を初診の医療機関に依頼します。

(※ 初診と請求時の医療機関が同じ場合や知的障害で障害年金を申請(請求)する場合は「受診状況等証明書」は必要ありません。)

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「受診状況等証明書」で確認するポイント

ポイント1 前医からの紹介状の有無

「受診状況等証明書」の⑤欄 前医からの紹介状が「有」となっている場合は、「受診状況等証明書」を記載した医療機関の前に別の医療機関を受診していことになります。
紹介状が「有」とされている場合は、紹介状を記載した医療機関が初診の医療機関になる可能性がありますので、紹介状を記載した医療機関であらためて「受診状況等証明書」を依頼する必要があります。

 

ポイント2 発病から初診までの経過欄に前医の記載がないか

⑤欄 発病から初診までの経過は「受診状況等証明書」で最も重要になる項目です。
「初診」であることが明確にわかるか、前医があると思われるような記載がないか確認します。

例えば、次の事例の場合は、「受診状況等証明書」を記載した医療機関(心療内科)よりも前に別の病院を受診していることがわかります。


⑤ 発病から初診までの経過

平成20年4月管理職に昇進し、業務負担や残業などの負荷が増大した。

頭重感、体熱感、意欲や興味の減退を自覚するようになり平成18年9月頃に他院受診

薬物療法により一旦は寛解するも、平成25年10月頃から再び体調不良を訴えて初診となる。

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「受診状況等証明書」を取得できないとき

法律上、医療機関のカルテは、診療が終了してから5年間保管することとされています。
このため、初診の医療機関の終診から5年以上経過している場合は、カルテが廃棄されている可能性があり、「受診状況等証明書」を記載してもらえないことがあります。

この場合には、初診の医療機関の「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成し、転院先の医療機関で「受診状況等証明書」の作成を依頼します。転院先でも「受診状況等証明書」が取得できなかった場合は、さらにその次の医療機関で「受診状況等証明書」を依頼します。

「受診状況等証明書」取得のフロー図

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「受診状況等証明書が添付できない申立書」だけで初診日は認められません

障害年金の申請(請求)では「初診日」が非常に重要です。

「受診状況等証明書が添付できない申立書」は、初診の医療機関で「受診状況等証明書」を取得できなかったことを申し立てる書類になります。
「初診日」は自己申告で認められることはなく、客観的な資料により「初診日」または「初診時期」を特定する必要があります。
つまり、「受診状況等証明書が添付できない申立書」だけで初診(受診)の証明にはならず、「初診日」を客観的に証明する参考資料を探す必要があるのです。

「初診日」を客観的に証明する参考資料の例

・母子健康手帳(発育の遅れなど)
・診療科名や日付が記載されている診察券
・身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳を申請した時の診断書
・生命保険の給付金を請求した際の診断書
・健康保険の給付記録(健康保険組合)
・初診料の点数が入っている病院の領収証
・お薬手帳
・転院先の医療機関への紹介状

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初診日が参考資料によって認められた事例

初診時の領収証により初診日証明(双極性感情障害)

職場での人間関係で悩み事が続いていた。前職も人間関係で悩んだ末に退職しており、なぜ同じようになってしまうか思い悩んでいた。精神面の不調から夜も眠れないようになり、急に涙が止まらなくなってしまったため、心療内科を受診して治療を開始した。

この方の場合、初診と転院先の医療機関のカルテはすでに廃棄されていましたが、初診の医療機関の領収証と発病時の傷病手当金の支給申請書の写しを保管されていたことから、傷病手当金の支給申請書で発病(初診)時期を特定し、領収証の「初診の診療報酬点数」から初診日を特定しました。

障害年金の請求傷病とは別疾患のカルテで初診日証明(平山病)

高校2年生時、右手の人差し指が曲がらなくなり、握力が低下しているように感じた。
自宅近くの整形外科を受診してレントゲン等の検査をしたが異常はなかった。
その後も手の状態は変わらず、「平山病 若年性一側上肢筋萎縮症」との確定診断を受けたのは初診の整形外科から7番目の医療機関だった。

平山病の初診日は請求時より40年以上前のことでした。発病の初期頃は経過観察のために通院されていましたが、医師から「平山病に対しての治療法がない」と言われていたため、病院を受診することはなくなっていました。

平山病で受診していた病院には診療録は廃棄されており、初診日証明が困難な案件となりました。当初第三者証明での請求を考えていましたが、請求人は平山病とは異なる疾患(頚髄萎縮、頸椎ヘルニアの後遺症)で入院歴があったため、診療録の開示請求したところ、リハビリテーション医療依頼書に「17yo 平山病発症 右上位優位の筋力低下」との文言が見つかり、これにより「17歳」を初診日として申し立てることができました。

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初診日を確定することができない場合

初診日の証明は、カルテに基づいた記載された「受診状況等証明書」を取得することが大変重要になります。

しかし、法律上、カルテの保存期間は最終の受診から5年間とされていることから、最終受診が5年以上前にある場合は、初診日の証明を取得できないことが多くあります。

このような場合は、初診日を客観的に証明する資料を探す必要がありますが、どのようにしても参考資料が見つからない場合は、「2番目以降の医療機関の資料」や「第三者からの申立書」、「一定期間に初診日があること」を証明することで初診日が認められる場合があります。

大事なことは初診日が何年も前だからとあきらめないことです。

 

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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