障害年金 初診日の証明ができないとき | かなみ事務所 - 障害年金専門の社労士が解説(川西,池田,伊丹,宝塚,豊中)
障害年金の申請(請求)では、カルテに基づいた記載された初診日の証明が非常に重要になります。しかし、法律上、カルテの保存期間は最終の受診から5年間とされていることから、最終受診が5年以上前にある場合は、初診日の証明を取得できないことが多くあります。ここでは、初診日の証明が取得できないときの対応方法を解説します。
初診日の証明書が取得できない場合
障害年金の制度では「初診日」を基準にして、請求する制度(国民年金・厚生年金)が確定し、初診日の前日までの保険料納付状況を確認されますので、「初診日」が非常に重要になります。
障害年金を申請(請求)する際は、初診の医療機関から「受診状況等証明書」を取得することになりますが、初診の医療機関の終診が5年以上前の場合は、カルテが廃棄されている可能性があり、「受診状況等証明書」を記載してもらえないことがあります。
この場合には、初診の医療機関の「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成し、「初診日」を証明する「参考資料」を添付する必要があります。しかし、どのようにしても参考資料が見つからない場合があります。
このような場合は、「2番目以降の医療機関の資料」や「第三者からの申立書」、「一定期間に初診日があること」などを証明することで初診日が認められる場合があります。
>> 障害年金 受診状況等証明書(初診日証明)の取得方法の記事はこちら
2番目以降の医療機関の資料で初診日を証明
障害年金を申請(請求)する5年以上前に医療機関が作成した資料(カルテ等)に、請求者が申立てた初診日が記載されている場合は、その日を初診日として認められる場合があります。
この場合、「受診状況等証明書」や「診断書」に記載されている内容は「医師にいつ話したのか」が重要になります。
医療機関が作成した資料 「受診状況等証明書」
次の事例は、障害年金を申請する5年以上前の「平成25年10月26日」に「平成18年9月頃に他院受診」と医師に伝えていることから「平成18年9月」を初診日として障害年金を申請しているものです。
⑪ 「受診状況等証明書」の記載年月日
障害年金を申請(請求)するのは令和3年である。
⑤ 発病から初診までの経過を記載で使用した資料
「初診時の診療録により記載したもの」とされている。
⑤ 発病から初診までの経過に記載された内容
「平成18年4月 管理職に昇進し、業務負担や残業などの負荷が増大した。頭重感、体熱感、意欲や興味の減退を自覚するようになり、平成18年9月に他院受診。薬物療法により一旦は寛解するも、平成25年10月頃から再び体調不良を訴えて初診となる。」
⑥ 初診年月日 ⑦終診年月日
受診状況等証明書を作成した病院の初診日は、平成25年10月26日であり、これは障害年金を申請(請求)する5年以上前のことである。
医療機関が作成した資料 「診断書」
次の事例は、障害年金を申請する5年以上前の「平成21年10月5日」に「平成18年9月頃」が初診日と医師に伝えていることから「平成18年9月」を初診日として障害年金を申請しているものです。
診断書 ② 傷病の発生年月 ③ 初めて医師の診察を受けた日
「平成18年9月頃」とされており、これは、「平成21年10月5日に本人が申立てた」ことになっている。
診断書 ⑦ 発病から現在までの病歴
「平成21年10月5日」に本人から聴取したものであり、内容は「平成18年4月 管理職に昇進し、業務負担、残業などの負荷が増大した。◯◯◯◯◯◯◯◯◯ 頭重感、体熱感、意欲や興味の減退を自覚するようになり、平成18年9月に○○○心療内科を受診して薬物療法を開始する。」とされている。
⑩ 障害年金の請求(申請)する時期
障害年金を申請(請求)するのは令和3年2月2日である。
「初診日に関する第三者からの申立書」で初診日を証明
「初診日」を証明する「参考資料」がどのようにしても見つからない場合は、「初診日に関する第三者からの申立書」と初診日を推定する資料によって初診日を証明する方法があります。
発病から初診時までの状況を知っている第三者に「初診日に関する第三者からの申立書」を記載してもらいます。第三者が請求者の受診状況を直接的に見ていた場合や、請求者や請求者の家族等から、請求者の初診日頃の受診状況を聞いていた場合などが該当します。この第三者からの申立てで重要なことは「発病時期や発病時の状況を具体的に記載してもらう」ことです。
第三者証明を記載できる者
第三者証明を行う者については、請求者の民法上の三親等以内の親族(親や祖父母、子、兄弟姉妹、叔父、叔母、甥、姪など)による第三者証明は認めないとしています。
第三者証明の人数
原則として複数の第三者証明があることが必要とされています。
ただし、請求者が複数の第三者証明を得られない場合でも、医療機関の受診にいたる経過や医療機関におけるやりとりなどが具体的に示されていて、相当程度信憑性が高いと認められるものであれば、第三者証明として認めることができるとされています。
また、初診日頃に請求者が受診した医療機関の担当医師、看護師その他の医療従事者による第三者証明の場合には、請求者申立ての初診日について参考となる他の資料がなくとも、第三者証明のみで初診日を認めることができるとしています。
第三者証明に記載する事項
第三者証明としての記載事項は次のような内容です。
- 請求者の初診日頃の受診状況を直接的に見て認識していた場合に、その受診状況を申し立てるもの
- 請求者や請求者の家族等から、請求者の初診日頃の受診状況を聞いていた場合に、その聞いていた受診状況を申し立てるもの
- 請求者や請求者の家族等から、請求時から概ね5年以上前に、請求者の受診状況を聞いていた場合に、その聞いていた受診状況を申し立てるもの
第三者証明と初診日を推定する参考資料
原則として、第三者証明だけでは「初診日」として認められず、初診日を推定する参考資料が必要になります。ただし、「初診日を推定する参考資料」は、初診日が20歳前にあるか、20歳以降にあるのかで取り扱いが異なります。
必要な第三者証明の枚数 | 参考資料 | |
---|---|---|
20歳前に初診日がある場合 | 原則として2人からの証明 | 第三者証明だけで認められる場合あり |
20歳以降に初診日がある場合 | 原則として2人からの証明 | 必要 |
20歳に厚生年金に加入している場合 | 原則として2人からの証明 | 必要 |
「初診日に関する第三者からの申立書」の事例
請求人の母親の知人から第三者証明(20歳前の初診日)
次の事例は、請求人の母親の知人が記載された申立書です。請求人の小中学生の頃から知っており、母親から「心療内科を受診している」と聞いていたというものです。心療内科を受診していた時期も分かっており、それが20歳前の期間でした。
20歳前に初診日がある障害基礎年金の申請(請求)は、請求者が20歳前に発病して、医療機関で診療を受けていたことを明らかにすることで初診日が認められることがあります。
初診の医療機関の主治医から第三者証明(20歳後の初診日)
次の事例は、請求人の初診時に診察した医師が申立てたものです。勤務医だった頃に請求人を診察したことを覚えておられました。「請求人が△△△病院の看護師をしていたこと」「ご自分のクリニックを開業した際、請求人も転院して引き続き診察していた」ことを記憶されていました。
当初、初診の時期までは記憶されていませんでしたが、△△△病院に在職期間の証明をもらい、医師に情報提供したところ、「△△△病院に在職していた平成12年5月から平成13年2月までの期間に診察したのは間違いない」ということで申立書を記載されました。
請求人初診日頃に請求者が受診した医療機関の担当医師による第三者証明の場合には、請求者申立ての初診日について参考となる他の資料がなくとも、第三者証明のみで初診日を認められる場合があります。
初診日が一定の期間内にあると証明することで初診日を証明
初診日を具体的に特定できなくても、参考資料により一定の期間内に初診日があると確認された場合は、請求者が申し立てた初診日が認められることがあります。
初診日が一定の期間であると確認するための参考資料とは
初診日が一定の期間内であると確認するためには請求者が提出する参考資料の例については、次のようなものが考えられます。
一定の期間の始期に関する資料の例
- 就職時に事業主に提出した診断書
- 人間ドックの結果
- 交通事故が起因となった傷病の場合は交通事故の時期を証明する資料
一定の期間の終期に関する資料の例
- 2番目以降に受診した医療機関による受診状況等証明書など
- 障害者手帳の交付時期に関する資料など
初診日があると確認された一定の期間中、同一の公的年金制度に継続的に加入していた場合
初診日があると確認された一定の期間が全て国民年金の加入期間のみであるなど同一の公的年金制度の加入期間で、かつ、その期間中のいずれの時点においても、障害年金を支給するための保険料納付要件を満たしている場合は、請求者が申し立てた初診日が認められることがあります。
なお、その期間中の全ての期間が、20歳前の期間や60歳から65歳の待機期間(厚生年金等の加入期間である場合を除く。)のみである場合は、同一の公的年金制度の加入期間となっているものとして取り扱われます。また、その際、20歳前の期間については、保険料納付要件を考慮されません。
初診日があると確認された一定の期間中、異なる公的年金制度に継続的に加入していた場合
初診日があると確認された一定の期間が国民年金の加入期間と厚生年金の加入期間であるなど異なる公的年金制度の加入期間で、かつ、その期間中のいずれの時点においても、障害年金を支給するための保険料納付要件を満たしている場合は、請求者申立ての初診日について参考となる他の資料とあわせて初診日を認められることがあります。
ただし、請求者申立ての初診日が、国民年金の加入期間、20歳前の期間又は60歳から65歳の待機期間である場合には、いずれの場合においても、障害厚生年金等ではなく障害基礎年金を請求(申請)することになりますので、初診日があると確認された一定の期間に厚生年金等の加入期間が含まれていたとしても、請求者申立ての初診日について参考となる他の資料がなくとも請求者が申し立てた初診日を認めらる場合があります。
健診日を初診日とする場合
初診日は、原則として初めて治療目的で医療機関を受診した日となり、健康診断を受けた日(健診日)は初診日としては取り扱われません。ただし、初めて治療目的で医療機関を受診した日の医証が得られず、医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果である場合で、請求者から健診日を初診日とするよう申立てがあれば、健診日を初診日とし認められることがあります。
この場合、健診日を証明する資料(人間ドックの結果など)を提出する必要があります。
会社の健康診断日を初診日として認定された事例
平成10年に行われた会社の健康診断において尿に糖が出ていると指摘され、病院を受診するように指示された。
A内科を受診すると1型糖尿病の可能性があると言われ、B病院を紹介された。
B病院で1型糖尿病の確定診断を受け、インスリン治療が始まった。
A病院を受診してから約10年間、障害年金を請求(申請)する時には5番目の医療機関であるE病院に通院していた。
A内科とB病院の診療録は廃棄されており、C病院、D病院、E病院ではA内科を受診した時期を特定することができなかった。
初診時期の特定は困難かと思われたが、請求人は尿糖が指摘された平成10年の健康診断結果表を保管しており、また、平成8年と平成9年の尿糖が指摘されていない健康診断結果表も保管していた。
異常(尿糖)の指摘を受ける前の2年間は何も異状はなかったため、3年分の健康診断結果表を元に尿糖を指摘された健康診断日を初診日として申し立てた。
諦めないことが大事です
「初診日」は障害年金の申請(請求)で非常に重要になります。
初診日の証明ができない場合は、障害年金を申請(請求)しても「却下」になる可能性があります。
初診の病院にカルテが残っていなくてもあきらめずに資料を探すことが大事です。
もしも判断に迷ったり悩んだりした場合は、年金事務所や社会保険労務士に相談するようにしましょう。
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