大阪府豊中市 統合失調症の病識がなく、未受診期間があるため遡及請求は認められず | かなみ社会保険労務士事務所

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相談者の状況

平成18年4月、夫からの暴力に耐えかねて離婚することになりました。精神的ショックとトラブルは深く心を傷付け、行き先を誰にも告げずに突然行方不明になるという事態が発生しました。幸い、友人宅で保護され大事には至りませんでしたが、この頃から独り言や「誰かに狙われている」といった幻覚・妄想の症状が現れ始めていました。

その後、両親と同居することで一時的に精神状態は安定したかに見え、パートタイムでの就労を開始しました。しかし、帰宅するなり「会社のお金の使い方がおかしい」「社員が居眠りばかりしている」「経営方針を正すべきだ」など、現実とは乖離した訴えを両親に訴えるようになりました。職場でも独り言を呟く姿が目撃されるなど、周囲から見ても精神状態の異常は明らかであり、結局契約更新はされず退職となりました。

退職後はさらに病状が悪化し、大声での叫び声、家族への暴力、家具を破壊するといった攻撃的な行動が目立つようになりました。幻覚や妄想も激しさを増し、何もないのに110番や119番への通報を繰り返すようになりました。平成22年4月には保健所と医師の介入により医療保護入院となりましたが、退院後も「自分は病気ではない」という病識の欠如から服薬を拒否し、両親が必死に管理を行う日々が続きました。

その後も何度か就労を試みましたが、人間関係の構築ができず、妄想や幻覚の再発により短期間での退職を繰り返していました。

社会との接点がなくなってからは、自室に引きこもり、昼夜逆転の不規則な生活になりました。食事を拒否して衰弱し点滴を受けることもあれば、逆に深夜に素足で家を飛び出し警察に保護されることもありました。

無気力・無表情で過ごす日が多くなり、一人になると誰かと会話しているかのように夢中で独り言を話し、突然「消えろ!」「出ていけ!」と甲高い声で叫び出すようになっていました。

受任から障害年金の請求までに行ったこと

1. 15年に及ぶ病歴と医師との連携

ご本人は発病から約15年近く、同じ医療機関に通院されていました。しかし、主治医は障害年金の請求に対して協力的ではなく、診断書の作成を断られていました。
幸いなことに主治医が交代したタイミングで再度アプローチを行い、新しい先生のご理解を得て障害年金の請求手続きを進めることが可能となりました。

2. 「障害認定日」の壁と診断書の取得

障害年金には、初診日から1年6ヶ月経過した時点(障害認定日)の状態に基づいて請求する「障害認定日請求」という方法があります。この場合、障害認定日から3ヶ月以内の診断書が必要です。

【直面した課題】
障害認定日の頃、ご本人の精神状態は極めて悪化しており、妄想や暴力、徘徊などが頻発していました。しかし、「病識がないために治療を拒否しており、「障害認定日頃の数ヶ月間は、通院が途絶えていたのです。

通常であれば診断書が取れずに諦めざるを得ないケースですが、以下の対応を行いました。

  • ✔ 近似の受診記録の活用
    保健所と病院の連携により、障害認定日から約10ヶ月後にようやく受診できた記録が存在しました。
  • ✔ 事情を説明した上での提出
    認定日時点の診断書は取得できませんでしたが、「認定日から10ヶ月ずれた時点」の診断書を作成していただきました。「障害認定日頃も同様の状態であったと推測する」という一文と、障害認定日当時は受診できないほど重篤であった旨の申立書を提出して、障害認定日(遡及)請求を行いました。

3. 診断書の内容と請求方針

提出した診断書の評価は以下の通りです。

時期 日常生活能力の判定 日常生活能力の程度
障害認定日頃
(約10ヶ月後の診断書)
平均 2.5 (3)
現在の請求日 平均 2.8 (3)

結果

障害基礎年金 2級
(大阪府豊中市・統合失調症)

請求日(現在):障害基礎年金 2級 決定
※障害認定日(過去)への遡及請求については、提出された診断書(認定日から10ヶ月後)では、認定日時点の状態を確定できないとして却下となりました。

遡及請求は残念ながら認められませんでしたが、現在の重篤な状態が認められ、将来に向かっての年金受給が決定しました。これにより、入院費やご家族の経済的負担を少しでも軽減できる結果となりました。

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投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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