身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳と障害年金 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳は、障害年金とは異なる制度であり、それぞれ対象となる傷病や認定基準が異なります。また、手帳と障害年金の等級が必ずしも一致するわけではなく、手帳の等級が軽度であっても障害年金を受給できる可能性があります。ここでは、各種障害者手帳と障害年金の関係について詳しく解説いたします。
身体障害者手帳と障害年金
身体障害者手帳の制度
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に定める身体上の障害がある者に対して交付され、身体障害者福祉法第15条に根拠を持っています。
交付対象者は、身体障害者福祉法別表に掲げられた身体上の障害を持つ者であり、障害の種類別に重度の側から1級から6級の等級が定められています。原則として更新はありませんが、障害の状態に変化があると考えられる場合は再認定が行われます。
この手帳を持つことで、自治体や事業者が提供するサービスや税制上の優遇措置などを受けることができます。
身体障害者手帳の対象
身体障害者手帳は、以下の障害が対象となっています。
- 視覚障害
- 聴覚又は平衡機能の障害
- 音声機能、言語機能、又はそしょく機能の障害
- 肢体不自由
- 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
- ぼうこう又は直腸の機能の障害
- 小腸の機能の障害
- ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
- 肝臓の機能の障害
身体障害者手帳と障害年金の関係
障害年金は、障害の原因となった傷病によって日常生活や労働に著しい制限がある場合に、経済的な支援を目的に支給され、障害の程度は、国民年金法施行令・厚生年金保険法施行令別表に定められています。
身体障害者手帳と障害年金のどちらも、一定の障害を対象にする制度ですが、根拠となる法律や制度設計の考え方などは異なります。両制度には、互いに直接的な関係がないにも関わらず、以下のような誤解があります。実際には、手帳の有無や等級が障害年金に影響を与えるわけではなく、障害年金の審査は日常生活の状況や援助の必要度に基づいて行われています。
- 身体障害者手帳と障害年金の等級は異なる
身体障害者手帳の等級と障害年金の等級は一致しません。
例えば、心臓機能障害でペースメーカー等を入れた方の場合、身体障害者手帳が1級であっても、障害年金は原則3級に認定されます。また、股関節に人工関節等を入れた方の場合、手帳が4級(5級、7級、非該当)であっても、障害年金は原則3級で認定されます。 - 身体障害者手帳がなくても障害年金を受給できる
身体障害者手帳が交付されていなくても、障害年金を受給することは可能です。
例えば、悪性新生物の治療中の方が手帳の交付を受けていなくても、障害年金が支給されることがあります。 - 身体障害者手帳があっても障害年金を受給できないこともある
身体障害者手帳が交付されていても、障害年金が支給されないこともあります。
身体障害者手帳は、身体上の障害がある者に対して交付されますが、障害年金は、日常生活や労働に著しい制限がある場合に支給され、また、障害の原因となる傷病の初診日を証明し、初診日までの保険料納付状況なども考慮されるからです。
療育手帳と障害年金
療育手帳の制度
療育手帳は、知的障害があると判定された方に交付される手帳です。(自治体によっては発達障害の方にも交付されます)
判定基準等の運用方法は各自治体において定められており、障害の程度に応じて、重度(A)とそれ以外(B)に区分されており、自治体によっては、それ以外(B)を細分化している場合もあります。
この手帳を持つことで、自治体や事業者が提供するサービスや税制上の優遇措置などを受けることができます。
療育手帳と障害年金の関係
知的障害があると判定された方には療育手帳が交付され、障害年金も知的障害の方で日常生活に著しい制限がある方を対象にしています。
療育手帳の有無や等級が障害年金に影響を与えるわけではなく、障害年金の審査は日常生活の状況や援助の必要度に基づいて行われています。
- 療育手帳の判定と障害年金の等級は異なる
療育手帳の障害の程度と障害年金の等級は必ずしも一致しません。例えば、療育手帳がA判定でも障害年金が2級になることや、B判定であっても日常生活に著しい制限がある場合には障害年金を受給できる可能性があります。 - 療育手帳の判定が軽度であっても障害年金は支給される
障害年金の認定基準には、「知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する」とされています。このため、療育手帳の判定が軽度(BやB以下)の次のような方でも、日常生活に著しい制限がある場合には障害年金を受給することができます。
・大阪府豊中市 WAIS-Ⅲ IQが70 軽度精神遅滞で障害基礎年金2級を受給
・大阪府池田市 知的障害(WAIS-Ⅲ IQ59 )で障害基礎年金2級を受給 - 療育手帳が交付されていなくても障害年金は支給される
障害年金は、知的障害により日常生活に著しい制限がある方を対象にしており、療育手帳の交付の有無は受給の要件に入っていません。
療育手帳は知的障害であることを示すものであって、障害年金の制度とは関係ありません。
精神障害者保健福祉手帳と障害年金
精神障害者保健福祉手帳の制度
精神障害者保健福祉手帳は、精神障害のため、長期にわたり日常生活や社会生活への制約がある方を対象とした手帳です。交付対象者は、統合失調症、気分(感情)障害、てんかん、器質性精神障害、発達障害、その他精神疾患などが含まれます。障害の等級は、精神疾患の状態と能力障害の状態の両面から総合的に判断され、重度の側から1級から3級まであります。
この手帳を持つことで、自治体や事業者が独自に提供するサービスや税制上の優遇措置などを受けることができます。
精神障害者保健福祉手帳と障害年金の関係
精神障害者保健福祉手帳は、精神障害の方が日常生活や社会生活において支援を受けるための手帳であり、障害年金は精神障害によって日常生活や労働に著しい制限がある場合に、経済的な支援を目的に支給されるものです。手帳の有無や等級が障害年金に影響を与えるわけではなく、障害年金の審査は日常生活の状況や援助の必要度に基づいて行われています。
- 精神障害者保健福祉手帳と障害年金の等級は異なる
精神障害者保健福祉手帳と障害年金は、直接的な関係はなく、それぞれの制度で審査基準が異なります。そのため、手帳と障害年金の等級は同じではなく、3級の手帳が交付されていても障害年金は2級になる場合があります。 - 精神障害者保健手帳が交付されていなくても障害年金は支給される
精神障害者保健手帳が交付されていなくても、障害年金を受給することは可能です。精神障害者保健手帳の交付の有無は障害年金の受給の要件に入っていないからです。 - 障害年金が支給されない場合がある
精神障害者保健福祉手帳は、統合失調症、気分(感情)障害、てんかん、器質性精神障害、発達障害、その他精神疾患などを対象としており、これらの精神障害によって長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある方に交付されます。障害年金では、原則として認定の対象とされていない神経症も手帳の交付対象とされているため、手帳が交付されているからといって障害年金は支給されるとは限りません。※ ただし、神経症であっても臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱われ、障害年金が支給される可能性があります。
最後に
ここでは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳と障害年金の関係について解説しました。
障害年金を請求する際は、必要な知識を把握した上で、年金事務所に足を運び、正しい手順で手続きを進める必要があります。
障害年金の手続きは複雑で、一般の方には分かりにくい点も多いため、不安や疑問がある場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。
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