身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳と障害年金 | かなみ社会保険労務士事務所

身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別の制度で、対象となる傷病も制度間で異なっています。

ここでは、各種障害者手帳と障害年金の関係を解説いたします。

身体障害者手帳と障害年金

障害者手帳

「身体障害者手帳」は、身体機能に一定以上の障害のある方に交付されます。障害の等級は1~7級まであり、「身体障害者障害程度等級表」に基づいて障害の種類ごとに定められています。
身体障害者手帳の申請には、都道府県等が指定した医師(認定医)の診断書が必要です。申請用の診断書の入手や指定病院(認定医)の確認は、市区町村の障害福祉課で行います。医師に診断書を作成してもらったら、診断書と必要書類を市区町村の障害福祉課に提出します。
一方で、「障害年金」は、障害により日常生活や労働に著しい支障がある方に支給されます。障害基礎年金には1級と2級があり、障害厚生年金には1級から3級まで、障害手当金まであります。
身体上の障害(内部疾患を含む)に加えて、 日常生活や労働に著しい支障がある場合に障害年金が支給されます。

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身体障害者手帳と障害年金の関係でよくある誤解

2つの制度間で等級が同じだと思っている

「私の身体障害者手帳は4級だから障害年金は受給できない」と誤解している方がいらっしゃいました。

両制度はまったく別のもので、基準も異なります。「身体障害者手帳の等級=障害年金の等級」という関係はありません。

身体障害者手帳が4級であっても、具体的な状況により障害年金を受給できる可能性があります。例えば、心臓ペースメーカーを入れた場合、身体障害者手帳では原則1級、ペースメーカーへの依存度などにより3〜4級とされていますが、障害年金では3級以上と認定されています。同様に、股関節へ人工関節を入れた場合、身体障害者手帳では4、5、7級または非該当とされますが、障害年金では3級以上に認定されることになります。

障害年金の場合、その傷病により日常生活に著しい支障が出ているならば、身体障害者手帳の等級のかかわらず、障害年金を申請(請求)することで受給の可能性があります。

 

身体障害者手帳がなければ障害年金を請求(申請)できないと思っている

身体障害者手帳と障害年金は別の制度です。身体障害者手帳がなくても、障害年金を申請(請求)できないということはありません。身体障害者手帳が交付されていない人でも、日常生活や労働に著しい支障がある場合には、障害年金を受給できるのです。

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療育手帳と障害年金

療育手帳は、知的障害があると判定された方に、児童相談所又は知的障害者更生相談所から交付される手帳です。

療育手帳制度は、各自治体で判定基準などの運用方法が定められています。例えば、兵庫県では、精神面(知能指数IQ)、生活面、行動面、看護面などに基づき、A(重度)B1(中度)B2(軽度)に区分されています。

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療育手帳と障害年金の関係でよくある誤解

「軽度知的障害だから障害年金を受給できない」という誤解がありますが、障害年金の審査では「知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案され、総合的な判断」が行われています。そのため、軽度であっても日常生活に著しい制限を受けている場合には障害年金が支給されるケースもあります。

軽度知的障害で障害年金の請求(申請)をサポートした事例

Aさんの事例(WAIS-III 言語性IQ61 動作性IQ63 全IQ59)

生下時より精神遅滞がありましたが、家族や周囲はそれに気付くことなく成長しました。

小中学校は普通学級で過ごしましたが、勉強が難しく、学校への出席もままならなかったです。中学卒業後、就職しましたが、すぐに退職。その後は他人の庇護の元で生活をしていました。35歳を過ぎて結婚し、配偶者が夫の精神遅滞を感じ、検査を受けたところ、軽度精神遅滞と判明しました。


Bさんの事例(WAIS-III 全IQ60)

幼少期から理解力や行動の遅さがあり、小学校の低学年から勉強についていけませんでした。
婚姻後、家事や子育てがうまくできず、母親に手伝ってもらうなどの支援を受けていました。しかし、結婚生活がうまくいかず、離婚することになりました。

障害年金の申請(請求)には、「軽度精神遅滞」の障害の程度を中心に、日常生活の困難さを詳細に伝え、障害福祉サービスの利用状況などを参考資料として提出しました。(障害基礎年金2級)


Cさんの事例(WAIS-III 全IQ68)

小中学校や高校では普通学級で勉強をしていましたが、成績は常に低かったです。

高校を卒業してからは工場でフルタイムで働いていましたが、仕事が覚えられず、簡単な機械操作以外はできませんでした。上司からは常に叱責され、最終的には呆れられるようになりました。
幼少期から数字が苦手で計算ができず、仕事や日常生活がうまくできないことから、何か障害があるのではと病院を受診しました。発達検査の結果、発達障害であり、軽度精神遅滞だと分かりました。医師からは、発達障害よりも精神遅滞の方で日常生活に支障が出ているため、精神遅滞で診断書を記入するという話になりました。(障害基礎年金2級)

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精神障害者保健福祉手帳と障害年金

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患のある方が6か月以上にわたり日常生活や社会生活に支障がある場合に交付されます。

精神障害者保健福祉手帳には1級、2級、3級の等級があり、1級が最も障害の重い等級になります。

対象となる主な病名は、統合失調症、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、てんかん、高次脳機能障害、発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害)などです。

障害年金では認定の対象外となっているパニック障害や摂食障害も精神障害者保健福祉手帳では対象になっています。

精神障害者保健福祉手帳の法律施行令と障害年金の障害認定基準

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令

等級 精神障害の状態
1級 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

障害年金 障害認定基準

等級 精神障害の状態
1級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級 労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

精神障害者保健福祉手帳と障害年金の関係でよくある誤解

「精神障害者保健福祉手帳を持っているから障害年金を受給できる」というのはとくある誤解です。実際には、これらは異なる制度であり、手帳の有無が障害年金の受給に直結するわけではありません。

精神障害者保健福祉手帳は、主に精神疾患のある方が日常生活や社会生活に支障がある場合に交付されるものであり、医師の診断や病状に基づいて発行されます。一方で、障害年金は、日常生活や労働に著しい支障がある場合に支給されるものであり、手帳の有無によって受給資格が決まるわけではありません。

また、精神障害者保健福祉手帳を持っていても、障害年金の申請(請求)時には再度審査を受ける必要があります。その結果、手帳とは異なる等級で障害年金が決定される可能性があることにも注意が必要です。

最終更新日:

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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