失語症で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行
1. 失語症の障害認定基準
障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 音声または言語機能の障害」が定められています。
失語症は、通常「音声又は言語機能の障害」として取り扱われ、障害の程度は、発音に関わる機能や言語機能がどの程度失われているかによって判断されます。
1-1. 音声又は言語機能の障害としての失語症
音声又は言語機能の障害とは、発音に関わる機能や音声言語の理解・表出(話す・聞いて理解する・読む・書く)に関する機能が低下している状態をいいます。
失語症は主に脳血管疾患や頭部外傷などが原因で、言葉の理解・表出が障害された状態であり、以下のような点が審査では重視されます。
- 会話による意思疎通がどの程度できるか
- 聞いて理解する力・話して表現する力の障害の程度
- 文字言語(読み書き)の障害の程度
- 検査結果(標準失語症検査)があればその内容
1-2. 失語症の等級の目安
「音声又は言語機能の障害」の等級は、おおむね次のように考えられます。
| 等級 | 認定の目安 |
|---|---|
| 2級 |
|
| 3級 |
|
| 障害手当金 |
|
2. 初診日の考え方と障害認定日
2-1. 失語症の初診日
失語症の原因となった病気(脳血管疾患、脳腫瘍、頭部外傷など)で、初めて医師の診療を受けた日が初診日となります。
- 脳血管疾患(脳梗塞・脳出血等)により脳神経外科や内科などを受診した日
- 交通事故や転落事故などで救急搬送された日
- その他の病気で最初に病院を受診した日
2-2. 障害認定日
障害年金では、初診日から1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。
- 初診日から1年6か月を経過した時点の障害の程度で、障害等級に該当するかを判定
- その時点で該当しない場合、「事後重症」として、請求時点の状態で障害等級に該当するかを判定
3. 障害年金請求に必要な書類
失語症で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。
- 障害年金請求書
- 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険 障害給付」
- 初診日が20歳未満、または20歳以上60歳未満で国民年金加入 → 「国民年金 障害基礎年金」
- 診断書(聴覚・鼻腔機能・平衡機能・そしゃく・嚥下機能・音声または言語機能の障害用・様式第120号の2)
- 病歴・就労状況等申立書(病状の経過と生活・仕事への影響を時系列で記載)
- 受診状況等証明書(初診医療機関で作成)
- 年金生活者支援給付金請求書
4. 診断書の重要ポイント
障害年金の審査において、診断書の記載内容は極めて重要です。特に以下の項目に注意が必要です。
4-1. 会話による意思疎通の程度
- どの程度の会話が成立するのか(挨拶だけ・簡単なやり取りのみ・長い会話は困難など)
- ゆっくり話せば理解できるのか、繰り返しの説明が必要なのか
- 電話での会話・役所での手続き・買い物など、社会生活でのコミュニケーション状況
4-2. 失語症検査の結果
- 標準失語症検査を実施している場合は、検査名と結果の概略(SLTAなど)
- 聞く・話す・読む・書く、それぞれの障害の程度
- 復唱・呼称・理解など、どの領域に強い障害があるか
4-3.日常生活能力の評価
「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」の欄などで、実際のコミュニケーション能力がどう評価されているかがポイントです。
- 「家族となら通じるが、他人とは通じない」
- 「身振り手振りが必要」
- 「筆談が可能かどうか」
医師には、家庭や職場での具体的な困りごと(電話に出られない、買い物で困るなど)を伝え、診断書に反映してもらうことが必要です。
5. 失語症で障害年金を請求した事例集
失語症で障害年金を請求した事例をまとめています。気になる事例のリンクをクリックすると、詳しい解説ページへ移動します。
40代男性 失語症と高次脳機能障害で障害厚生年金2級を受給
障害等級:障害厚生年金2級/事後重症請求
概要:脳出血による高次脳機能障害と失語症の後遺症により、症状固定日に遡って障害厚生年金2級を受給できた事例です。
6. 最後に
本ページの内容は、失語症で障害年金を請求する方法をまとめたものです。
障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は、
- 最寄りの年金事務所での最新案内
- 厚生労働省・日本年金機構の最新リーフレット
- 障害年金に詳しい社会保険労務士
などに確認しながら進めることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。
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