糖尿病性網膜症で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行

糖尿病性網膜症で障害年金を請求するために必要な障害認定基準、初診日の考え方、必要書類、診断書の注意点などを専門家が分かりやすく解説します。この記事では、糖尿病性網膜症での障害年金請求の重要ポイントをまとめました。

1.眼の障害認定基準

障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 眼の障害」が定められています。

1-1. 視力の障害認定基準(「矯正視力」が基準)

視力障害は、眼鏡・コンタクトレンズなどで矯正した状態で判断されます。

等級 視力の目安 日常生活・就労イメージ
1級 ・良い方の眼の視力が0.03以下
・良い方が0.04で他方の眼が手動弁以下(手を振る動きがわかる程度)
・近距離でも形の判別ができない
・単独での移動や多くの作業が著しく困難
2級 ・良い方の眼の視力が0.07以下
・良い方が0.08で他方の眼が手動弁以下
・人の顔や表示の判別がかなり難しい
・日常生活に援助や配慮が必要
3級 ・良い方の眼の視力が0.1以下 ・大きな文字や表示は何とか読めるが、細かい作業や多くの職種で支障が出る状態
障害手当金 ・良い方の眼の視力が0.6以下
・一眼の視力が0.1以下
・一定の制限がある状態

1-2. 視野の障害認定基準

視野障害は、ゴールドマン型視野計または自動視野計のいずれか一方の結果で評価されます。

等級 視野の目安
1級 ・ゴールドマン型視野計ではⅠ/4の視標で周辺視野角度の合計が左右眼それぞれ80度以下、かつⅠ/2の視標で両眼中心視野角度28度以下
・自動視野計では、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下
2級 ・ゴールドマン型視野計では、Ⅰ/4の視標で周辺視野角度の合計が左右眼それぞれ80度以下、かつⅠ/2の視標で両眼中心視野角度56度以下
・自動視野計では、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下
3級 ・ゴールドマン型視野計では、Ⅰ/4の視標で周辺視野角度の合計が左右眼それぞれ80度以下
・自動視野計では、両眼開放視認点数が70点以下
障害手当金 ・ゴールドマン型視野計では、I/4の視標で両眼による視野が2分の1以上欠損
・ゴールドマン型視野計では、Ⅰ/2の視標で両眼中心視野角度56度以下
・自動視野計では、両眼開放視認点数が100点以下
・自動視野計では、両眼中心視野視認点数が40点以下

2.初診日の考え方と障害認定日

2-1. 初診日とは?

障害年金における初診日とは、「障害の原因となった傷病(糖尿病性網膜症)のために、初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日」のことをいいます。

糖尿病性網膜症は糖尿病の合併症であるため、糖尿病により最初に医師の診察を受けた日が「初診日」となります。

2-2. 障害認定日とは

初診日から1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。

  • 障害認定日に既に障害の程度に該当していれば
    障害認定日請求(遡っての請求)を行うことができます。
  • 障害認定日時点では障害の程度に該当しておらず、その後悪化した場合は
    事後重症請求として、請求日以降からの支給になります。

糖尿病性網膜症は、糖尿病の初診日から実際に眼の障害が出てくるまでに、数年から長い方だと数十年かかることが一般的です。そのため、障害年金の請求は、「事後重症請求」になる方が多くなります。

3. 障害年金請求に必要な書類

糖尿病性網膜症で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。

  • 障害年金年金請求書
    • 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険障害給付」
    • 初診日が20歳未満、20歳以上60歳未満の国民年金 → 「国民年金障害基礎年金」
  • 診断書(眼の障害用・様式第120号の1)
  • 病歴・就労状況等申立書(糖尿病の初診日から請求日までの経過を記載)
  • 受診状況等証明書(初診医療機関)
  • 年金生活者支援給付金請求書

4.診断書(眼の障害)の重要ポイント

障害年金の審査では、診断書が最も重要な書類といっても過言ではありません。糖尿病性網膜症の場合、次の点がポイントになります。

  • 視力・視野の検査結果
    ・矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズを使用した視力)を正確に記載してもらうこと。
    ・視野検査(ゴールドマン型視野計、自動視野計)の結果が、認定基準を判断する材料になります。
  • 視野の計測方法
    ・ゴールドマン型視野計と自動視野計では計測結果が異なる場合があります。
    ・ゴールドマン型視野計と自動視野計のどちらの検査方法が適切か医師に確認が必要。

5.よくあるつまずきポイント

5-1. 初診日・加入制度の確認

  • 糖尿病の初診日が把握できているか
  • その時点での加入制度(国民年金/厚生年金/共済)や年金保険料納付状況が分かっているか
  • 初診の医療機関で受診状況等証明書を書いてもらえるか確認したか

初診日が証明できないと、障害年金の請求まで進みません。医療機関の受診歴や健康診断の記録、紹介状など、できる限り客観的な資料を集めることが重要です。

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5-2. 障害手当金程度の障害

障害手当金とは、厚生年金に加入している間に初診日がある傷病について、初診日から5年以内に症状が固定し、その日から5年以内に請求した場合に支給される一時金のことです。

  • 糖尿病の初診日に厚生年金に加入していたか
  • 障害手当金程度の障害ではないか
  • 症状が固定していない場合は障害厚生年金3級が支給される

6. 糖尿病性網膜症で障害年金を請求した事例集

糖尿病性網膜症で障害年金を請求した事例をまとめています。気になる事例のリンクをクリックすると、詳しい解説ページへ移動します。

50代女性 身体障害者手帳診断書で障害等級を確認

障害等級:2級/事後重症請求

暗い場所での見えにくさをきっかけに網膜色素変性症と診断され、長期通院と身体障害者手帳の取得を経て、診断書など必要書類を整えて請求した結果、障害厚生年金2級が認定された事例です。

7.最後に

本ページの内容は、糖尿病性網膜症で障害年金を請求する方法をまとめたものです。

障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は

  • 最寄りの年金事務所での最新案内
  • 厚生労働省・日本年金機構の最新リーフレット
  • 障害年金に詳しい社会保険労務士

などに確認しながら進めることをおすすめします。

糖尿病性網膜症は、視力・視野の変化が徐々に進むことも多く、「糖尿病の初診日証明」を取得する作業は簡単ではありません。一人で抱え込まず、必要に応じて公的機関や専門家のサポートを受けながら、納得のいく形で手続きを進めていきましょう。

※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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