線維筋痛症で障害年金を請求する方法を解説 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行
線維筋痛症により、強い痛みや疲労感、その他の症状が原因で日常生活や労働に著しい支障が出ている場合、障害年金の対象となることがあります。障害年金を請求するには、初診日や医師の診断書などの証明が必要になります。この記事では、線維筋痛症の障害認定基準、請求手続きの流れ、準備すべき書類や注意点などについて解説いたします。
線維筋痛症とは
線維筋痛症は、原因不明であらゆる検査でもほとんど異常が認められないにも関わらず、全身の強い痛み(疼痛)やこわばりを主症状とし、精神神経症状(睡眠障害やうつ病など)、自律神経の症状(過敏性腸症候群)など様々な症状が生じる疾患です。こうした症状が長期間に渡った場合、強い痛み(疼痛)が進行・慢性化しやすく、そのために日常生活に著しい支障が生じることになってきます。
線維筋痛症の障害年金の等級
線維筋痛症による障害年金の等級は次のようになり、それぞれの等級によって支給額が決まります。
※3級は障害厚生年金のみ 支給される障害年金額は等級別の障害年金の年金額をご参照ください。
| 等級 | 障害の程度 |
|---|---|
| 1級 | 全身の激しい痛みが酷く、食事、排泄など日常生活動作のすべてにおいて介助が必要になっている |
| 2級 | 激しい痛みが持続し、日常生活動作のほとんどが一人でできてもやや不自由な場合、又は一人でできるが非常に不自由な場合 |
| 3級 | 激しい痛みのため、労働に著しい制限を受けているような場合 |
障害年金の請求手順
線維筋痛症による障害年金の請求手続きは、以下のような手順で進めます。
- 初診日を調べる
- 年金事務所などで「保険料納付要件」を満たしていることを確認する
- 受診状況等証明書を取得する
- 病歴・就労状況等申立書を作成する
- 診断書を取得する
- その他必要書類を揃える
- 年金事務所などに年金請求書を提出する
受診状況等証明書の取得
障害年金を受給するには、障害の原因となる傷病が発生する前に、年金保険料を一定期間納付していることなどが支給要件となるため、初診日が非常に重要になります。
線維筋痛症の場合、発症直後に確定診断されない事例が多くあるため、「診断書」や「受診状況等証明書」、「病歴・就労状況等申立書」などの提出書類の審査等を通じて、請求者が申し立てた初診日における診療が、線維筋痛症に係る一連の診療のうち初めての診療であると認められる場合は、請求者が申し立てた初診日を障害年金の初診日として扱うとされています。
具体的には次のようになります。
- 請求者が申し立てた初診日に係る医療機関が作成した「診断書」又は「受診状況等証明書」の記載内容から、請求者が申し立てた初診日において、線維筋痛症の症状に係る診療を受けていたものと認められること。 例えば、 請求者が身体の広範囲に及ぶ慢性疼痛について診療を受けていたものと認められる場合等がこれにあたります。
- 線維筋痛症に係る確定診断を行った医療機関が作成した診断書(確定診断に基づき他の医療機関が作成した診断書を含む)において、請求者が申し立てた初診日が線維筋痛症のため初めて医師の診療を受けた日として記載されていること。
- 発症直後に確定診断が行われなかった理由に関する申し立てが行われていること。 なお、提出書類の記載等から、線維筋痛症等に関連する医療機関への受診について未継続の期間が確認される場合にあっては、 当該未継続期間において、線維筋痛症の症状が継続している旨の申し立てが行われていること。 また、当該未継続期間が6ヶ月を超える期間となる場合にあっては、診断書等の医療機関が作成する書類の記載内容から、当該未継続期間において、線維筋痛症の症状が継続しているものと認められるものであること。
病歴・就労状況等申立書の作成
「病歴・就労状況等申立書」は、診断書や受診状況等証明書とともに、障害の認定において非常に重要な書類です。この書類は、診断書などが一時的な状況を示す「点」であるのに対し、発病から現在までの流れを記載する「線」の役割を持ちます。
発病から初診に至るまでの経緯や初診から現在までの治療経過、現在の病状や日常生活の状況などを具体的に記載することが重要です。原則として5年ごとに区切って記載しますが、転院歴がある場合は通院した病院ごとに記載します。専門用語ではなく、具体的なエピソードや個別の状況を記載していきます。
診断書を取得する
障害年金の請求で使用する診断書は「肢体の障害用の診断書」になります。
線維筋痛症の重症度分類試案(厚生労働省研究班)
線維筋痛症は、次の表のようにステージⅠ~ステージⅤに分類されていますので、障害年金を請求する場合、肢体の障害用の診断書⑨の項目にどのステージに該当しているのかが記載されている必要があります。
| ステージⅠ | 国リウマチ学会診断基準の18カ所の圧痛点のうち11ヵ所 以上で痛みがあるが、日常生活に重大な影響を及ぼさない。 |
| ステージⅡ | 手足の指など末端部に痛みが広がり、不眠、不安感、うつ状態が続く。日常生活が困難。 |
| ステージⅢ | 激しい痛みが持続し、爪や髪への刺激、温・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが全身に広がる。自力での生活は困難 |
| ステージⅣ | 痛みのため自力で体を動かせず、ほとんど寝たきりの状態に陥る。自分の体重による痛みで、長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない。 |
| ステージⅤ | 激しい全身の痛みとともに、膀脱や直腸の障害、口の渇き、目の乾燥、尿路感染など全身に症状が出る。普通の日常生活は不可能。 |
重症度分類(ステージ)以外に必要な項目
線維筋痛症の場合、重症度分類(ステージ)以外にも次の項目が必要になります。
- 握力
- 手(足)指関節の他動可動域
- 関節の可動域及び握力
- 日常生活における動作の障害の程度
- 補助用具使用状況
- その他の精神・身体の障害の状態
- 現症時の日常生活活動能力及び労働能力
- 予後
診断書の各項目に漏れがないか、実態と合っているかを必ず確認するようにしましょう。
障害等級2級として認定された事例
次の診断書は障害等級2級として認定された事例です。
障害の程度は、激しい痛みが持続しているため、日常生活動作のほとんどが 一人でできてもやや不自由な場合、又は一人でできるが非常に不自由な障害となっており、線維筋痛症の重症度分類試案の「ステージⅢと評価されているが、全身に痛みが広がっていることから、「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものに該当すると認められるため、 2級 15号と認定されています。


ご不安な方は障害年金の専門家への相談をしましょう
障害年金を請求する際は、必要な知識を把握した上で、年金事務所に足を運び、正しい手順で手続きを進める必要があります。
障害年金の手続きは複雑で、一般の方には分かりにくい点も多いため、不安や疑問がある場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。
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