変形性膝関節症で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行
1. 変形性膝関節症(人工関節)の障害認定基準
障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 下肢の障害」が定められています。
1-1. 人工膝関節と障害等級の基本
障害認定基準では、膝関節に人工関節を入れている場合には障害厚生年金3級に該当するとされています。
- 変形性膝関節症などで人工膝関節置換術を受けている
- 初診日に厚生年金被保険者の場合、障害厚生年金の対象になる
- 「3級」は障害厚生年金にのみ存在し、障害基礎年金には3級がない点に注意
人工関節の場合、初診日に厚生年金加入中であることが、3級認定の前提となります。
1-2. 2級以上が認定されるケース
障害認定基準には、人工膝関節を入れてもなお、次のような日常生活や労働に著しい制限が残っている場合には、2級以上の認定となる可能性もあります。
- 杖や補装具、歩行器がないとほとんど歩けない
- 100m程度の歩行でも強い痛みや休憩が必要になる
- 手すりがあっても階段の昇降が非常に不自由になっている
人工膝関節後も、関節可動域の制限・筋力低下・日常生活の動作の障害の程度などを総合的に判断されて等級が決まります。
2. 初診日の考え方と障害認定日
2-1. 初診日とは?
障害年金における初診日とは、「障害の原因となった傷病(変形性膝関節症)のために、初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日」のことをいいます。
変形性膝関節症(人工膝関節)の場合、一般的には次のように考えます。
- 膝の痛み・腫れなどで最初に整形外科を受診した日
- ヒアルロン酸注射・リハビリなどの治療が始まった日
- 交通事故やケガがきっかけの場合は、そのケガで初めて受診した日
初診日にどの年金制度(国民年金か厚生年金)に加入していたか、保険料納付要件を満たしているかなどを確認するため、初診日は非常に重要とされており、受診状況等証明書などで証明する必要があります。
2-2. 障害認定日と人工関節手術
原則として障害認定日は「初診日から1年6か月を経過した日」ですが、人工関節を挿入した場合、手術日が障害認定日になるケースがあります。
- パターン①:初診日から1年6か月「以内」に人工関節を挿入した場合
→ 人工関節を入れた日 = 障害認定日(この時点で請求可能) - パターン②:初診日から1年6か月「経過後」に人工関節を挿入した場合
→ 初診日から1年6か月経過日 = 障害認定日(原則どおり)
人工関節の場合、手術日と1年6か月経過日のどちらが障害認定日かで、請求のタイミングや遡及の可能性が変わることになります。
3. 障害年金請求に必要な書類
変形性膝関節症(人工膝関節)で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。
- 障害年金請求書
- 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険障害給付」
- 初診日が20歳未満、20歳以上60歳未満の国民年金 → 「国民年金障害基礎年金」
- 診断書(肢体の障害用・様式第120号の3)
- 病歴・就労状況等申立書(膝の症状と生活・仕事への影響を時系列で記載)
- 受診状況等証明書(初診医療機関)
- 年金生活者支援給付金請求書
4. 診断書(肢体の障害)の重要ポイント
障害年金では、診断書の内容が等級を大きく左右します。
2級以上に認定される可能性がある場合は、関節可動域や筋力、日常生活動作の障害の程度などの記載が非常に重要になります。
4-1. 人工膝関節で必ず入れてもらいたい記載
- 人工膝関節置換術を受けた事実の明記
- 「⑬人工骨頭・人工関節の装着の状態」に、手術の部位と手術日
4-2. 可動域・筋力の記載
人工膝関節を入れてもなお、日常生活や労働に著しい制限が残っており、2級以上に認定される可能性がある場合は、次のような項目がポイントになります。
- 膝関節の他動可動域(屈曲・伸展の角度)
- 右膝・左膝それぞれの測定値を記入
- 健側と患側の比較
- 筋力
- 正常/やや減/半減/著減/消失 などの区分
4-3. 日常生活動作(ADL)の具体的な記載
2級以上に認定されるためには、日常生活動作(ADL)の障害の程度が非常に重要です。
- 「屋内歩行」「屋外歩行」の状態
- 「階段の昇降」状態
- 「補助用具(杖・車椅子)」の使用状況
5. 最後に
本ページの内容は、変形性膝関節症(人工膝関節)で障害年金を請求する方法をまとめたものです。
障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は、以下の場所で確認しながら進めることをおすすめします。
- 最寄りの年金事務所での最新案内
- 厚生労働省・日本年金機構の最新リーフレット
- 障害年金に詳しい社会保険労務士
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。
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