慢性腎炎(ネフローゼ症候群)で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所

慢性腎炎(ネフローゼ症候群)で障害年金を請求するために必要な障害認定基準、初診日の考え方、必要書類、診断書の注意点などを専門家が分かりやすく解説します。この記事では、慢性腎炎(ネフローゼ症候群)での障害年金請求の重要ポイントをまとめました。

1. 腎疾患の障害認定基準

障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 腎疾患の障害」が定められています。

1-1. 対象となる主な病名

  • 慢性腎炎
  • ネフローゼ症候群
  • 腎硬化症
  • 慢性腎不全
  • 多発性嚢胞腎
  • 糖尿病性腎症

これらの疾患で、検査成績や日常生活・労働への影響がある場合、障害年金の対象となる可能性があります。

1-2. 腎疾患における障害等級のおおまかな目安

「腎疾患による障害」の認定では、主に以下の点が重視されます。

  • 検査成績(血清クレアチニン、内因性クレアチニンクリアランス、血清アルブミン、血清総タンパク等)
  • 一般状態区分(ア〜オ)※どの程度日常生活が制限されているか
  • 人工透析療法の有無
障害等級 障害の状態(腎疾患の例)
1級 検査成績が「高度異常」を示し、一般状態区分表の「オ」に該当するもの(ほとんど終日ベッド上での生活で、身の回りのことも多く介助が必要な状態 など)
2級
  • 検査成績が「中等度」または「高度異常」を示し、一般状態区分表の「エ」または「ウ」に該当するもの
  • 人工透析療法施行中のもの(血液透析・腹膜透析を含む)
3級 検査成績が軽度〜高度の異常を示し、一般状態区分表の「ウ」または「イ」に該当するもの

人工透析療法を行っている場合は、原則として障害等級2級に該当するとされています。

2. 初診日の考え方と障害認定日

2-1. 初診日の基本的な考え方

障害年金における初診日とは、「障害の原因となった傷病のために、初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日」のことをいいます。

慢性腎炎・ネフローゼ症候群の場合、一般的には次のように考えます。

  • 最初に尿タンパクの異常などを指摘された日
  • 血尿や浮腫などの症状で初めて受診した日
  • 腰や背中の痛みなどの症状で受診した日

2-2. 障害認定日の基本ルール

障害年金では、初診日から1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。

  • 初診日から1年6か月を経過した時点の障害の程度で、障害等級に該当するかを判定
  • その時点で該当しない場合、「事後重症」として、請求時点の状態で障害等級に該当するかを判定

2-3. 障害認定日と人工透析

原則として障害認定日は「初診日から1年6か月を経過した日」ですが、人工透析の場合、原則とは異なる障害認定日になることがあります。

  • パターン①:初診日から1年6か月「以内」に人工透析療法を開始した場合
    → 人工透析を開始した日から3か月を経過した日=障害認定日(この時点で請求可能)
  • パターン②:初診日から1年6か月「経過後」に人工透析療法を開始した場合
    → 初診日から1年6か月経過日 = 障害認定日(原則どおり)

人工透析の場合、初診日と人工透析開始日の時期によって、請求のタイミングや遡及の可能性が変わることになります。そのため、「人工透析開始日」と「初診日」の両方を正確に押さえておくことが非常に重要です。

3. 障害年金請求に必要な書類

慢性腎炎(ネフローゼ症候群)で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。

  • 障害年金請求書
    • 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険 障害給付」
    • 初診日が20歳未満、または20歳以上60歳未満で国民年金加入 → 「国民年金 障害基礎年金」
  • 診断書(腎疾患の障害用・様式第120号の6)
  • 病歴・就労状況等申立書(病状の経過と生活・仕事への影響を時系列で記載)
  • 受診状況等証明書(初診医療機関で作成)
  • 年金生活者支援給付金請求書

4. 診断書(腎疾患用)の重要ポイント

障害年金の結果は、診断書の内容に大きく左右されます。慢性腎炎・ネフローゼ症候群で障害年金を請求する際に重要となるポイントを押さえておきましょう。

4-1. 検査成績の記載

診断書では、次のような検査成績が重視されます。

  • 血清クレアチニン値(eGFR:推算糸球体濾過量)
  • 尿蛋白量
  • 血清アルブミン
  • 血清総蛋白

4-2. 一般状態区分(ア〜オ)の重要性

一般状態区分は、どの程度日常生活が制限されているかを段階的に表したもので、1〜3級の等級判定に直接関わります。

  • 「オ」で1級相当
  • 「エ」「ウ」で2級相当の可能性
  • 「イ」「ウ」で3級相当の可能性

「実際の日常生活状態」と「医師の認識」にギャップがあると、実際より軽く評価されてしまうことがあります。日常生活で困っている具体例を事前にメモしておき、診察時に伝えると記載がより正確になりやすくなります。

4-3. 人工透析に関する記載

人工透析を行っている場合、次の点が特に重要です。

  • 透析の開始日(導入日)
  • 透析方法(血液透析/腹膜透析)
  • 週あたりの回数・1回あたりの時間(必要に応じて)

これらの記載は、障害認定日や等級判断に直結するため、抜けや誤りがないかをよく確認しましょう。

5. よくあるつまずきポイント

5-1. 初診日・加入制度の確認

  • 腎炎(ネフローゼ症候群)での初診日が把握できているか
  • どこが初診日になるかあいまいになっていないか
  • その時点での加入制度(国民年金/厚生年金/共済)や年金保険料納付状況が分かっているか
  • 初診の医療機関が廃院していて「受診状況等証明書」が取れない

初診日が証明できないと、障害年金の請求まで進みません。医療機関の受診歴や健康診断の記録、紹介状など、できる限り客観的な資料を集めることが重要です。

5-2. 人工透析の開始日と障害認定日

  • 初診日から1年6か月以内に人工透析療法を受けたかどうか
  • 人工透析療法と1年6か月経過日のどちらが障害認定日になるか整理したか
  • 認定日請求(遡及)か事後重症請求か確認したか

5-3. 診断書の内容

  • 診断書に人工透析療法の開始日が明記されているか
  • 過去の検査成績(血清クレアチニン値や血清総蛋白など)が記載されているか
  • 一般状態区分が、実際の日常生活状態と乖離していないか

6. 最後に(最新情報の確認と専門家への相談)

本ページの内容は、慢性腎炎(ネフローゼ症候群)で障害年金を請求する方法をまとめたものです。

障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は、次のような最新情報を確認しながら進めることをおすすめします。

  • 最寄りの年金事務所での最新案内
  • 厚生労働省・日本年金機構の最新リーフレット
  • 障害年金に詳しい社会保険労務士への相談

※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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