肝硬変で障害年金を申請(請求)する方法を解説 | かなみ社会保険労務士事務所

肝硬変により日常生活や労働に著しい支障がでている場合には、障害年金を受給できる可能性があります。

ここでは、肝硬変になった場合の障害年金の基準や申請(請求)手続きのポイントを解説します。

肝硬変の障害認定基準は

肝硬変の「障害認定基準」は次のようにされており、それぞれの等級によって支給額が決まります。

※3級は障害厚生年金のみ 支給される障害年金額は等級別の障害年金の年金額をご参照ください。

等級 障害の程度
1級 後記の検査成績及び臨床所見のうち高度異常を3つ以上示すもの又は高度異常を2つ及び中等度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表の(オ)に該当するもの
2級 後記の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を3つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表の(エ)又は(ウ)に該当するもの
3級 後記の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表の(ウ)又は(イ)に該当するもの

・障害の程度の判定に当たっては、後記の検査成績及び臨床所見によるほか、他覚所見、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況を把握して総合的に認定されます。

検査成績/臨床所見

検査項目/臨床所見 基準値 中等度の異常 高度異常
血清総ビリルビン(mg/dℓ) 0.3~1.2 2.0 以上3.0 以下 3.0 超
血清アルブミン(g/d ℓ)(BCG 法) 4.2~5.1 3.0 以上3.5 以下 3.0 未満
血小板数(万/μ ℓ) 13~35 5 以上10 未満 5 未満
プロトロンビン時間(PT)(%) 70 超~130 40 以上70 以下 40 未満
腹水 - 腹水あり 難治性腹水あり
脳症(表1) - Ⅰ度 Ⅱ度以上

(表1)昏睡度分類

昏睡度 精神症状 参考事項
睡眠-覚醒リズムに逆転

多幸気分ときに抑うつ状態

だらしなく、気にとめない態度

あとで振り返ってみて判定できる
指南力(時、場所)障害

物をとり違える(confusion)

異常行動

(例:お金をまく、化粧品をゴミ箱に捨てるなど)

ときに傾眠状態(普通のよびかけで開眼し会話が出来る)

無礼な言動があったりするが、他人の指示には従う態度を見せる

興奮状態がない

尿便失禁がない

羽ばたき振戦あり

しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度をみせる

嗜眠状態(ほとんど眠っている)

外的刺激で開眼しうるが、他人の指示には従わない、または従えない(簡単な命令には応じえる)

羽ばたき振戦あり( 患者の協力がえられる場合)

指南力は高度に障害

昏眠(完全な意識の消失)

痛み刺激に反応する

刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめるなどがみられる
深昏睡

痛み刺激にもまったく反応しない

一般状態区分表

区分 一般状態区分
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

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障害年金の申請(請求)の進め方

肝硬変で障害年金を申請(請求)する場合、手続きの進め方は次のようになります。

  1. 「初診日」を調べる。
  2. 受診状況等証明書」取得する。
  3. 病歴・就労状況等申立書」作成する。
  4. 診断書(腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用」の作成を病院に依頼する。

具体的な手順はこちらのページで解説していますので、ご確認ください。

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肝硬変で障害年金を申請(請求)するポイント

ポイント1 肝硬変の原因がB型肝炎やC型肝炎ウィルスの場合

肝硬変の原因がB型肝炎やC型肝炎ウィルスの場合、障害年金では因果関係があるとみなされ、肝炎の初診日が障害年金の初診日とされます。

ただし、すべての事例において、肝炎の初診日が障害年金の初診日とはされず、肝炎となった経緯等、事例毎で判断されることに注意が必要です。

ポイント2 アルコール性肝硬変の場合

アルコール性肝硬変の場合は、継続して必要な治療を行っており、かつ、検査日より前に 180 日以上アルコールを摂取していないことが確認のできた場合に障害年金の認定の対象になります。

ポイント3 障害年金の申請(請求)では初診日の特定が重要

障害年金では、「初診日」を基準にして受給要件を満たしているのか確認されるため、「初診日」を特定することが重要になります。

「初診日」は、自己申告で認められることはなく、客観的な資料により「初診日」または「初診時期」を特定する必要があります。

「初診日」を客観的な資料で特定できない場合には、他の資料等の提出によって「初診日」を認めてもらえる可能性があります。大事なことは「初診日」が曖昧なまま、障害年金を申請(請求)しないことです。

「初診日」の取り扱いについては、以下のリンク先に掲載していますのでご覧ください。

>> 障害年金 受診状況等証明書(初診日証明)の取得方法

>> 障害年金 初診日の証明ができないとき

ポイント4 診断書の確認事項

肝硬変で障害年金を申請(請求)する際に使用する診断書は「診断書(腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用」なります。

障害認定の際に重要視されている検査成績(血清総ビリルビン、血清アルブミン、血小板数、プロトロンビン時間、腹水、脳症)に記載漏れがないか必ず確認します。食道静脈瘤となっていた場合は、その旨の記載漏れはないのか確認します。

自覚症状(易疲労感、全身倦怠感、嘔吐、皮膚掻痒感など)と医師の所見(浮腫、腹水、黄疸、食道静脈瘤、意識障害など)などがどのように記載されているかも重要です。

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投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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