関節リウマチ(上肢)で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行
上肢の関節リウマチで障害年金を請求するために必要な障害認定基準、初診日の考え方、必要書類、診断書の注意点などを専門家が分かりやすく解説します。この記事では、上肢の関節リウマチでの障害年金請求における重要ポイントをまとめました。
目次
1. 関節リウマチ(上肢)の障害認定基準
障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 上肢の障害」が定められています。
1-1. 関節リウマチ(上肢)と障害等級の基本
関節リウマチ(上肢)による障害は、「上肢の障害」として認定されます。痛みそのものよりも、次のような点が審査の対象となります。
- 関節の可動域制限(動かしにくさ)の程度
- 筋力の低下の程度
- 日常生活動作がどの程度制限されているか
これらの要素を総合的に見て、障害等級に該当するかどうかが判断されます。
1-2. 関節リウマチ(手指)における障害等級のおおまかな目安
障害年金の等級は、障害の状態によっておおむね次のように区分されます。
- 1級:両上肢の機能に著しい障害を有し、日常生活の用を弁ずることが不能なもの(常に介助が必要なレベル)。
- 2級:両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(日常生活に著しい制限を受けるレベル)。
- 3級:両上肢の機能に障害を残すもの(労働に制限を受けるレベル)。
特に手指に関しては、「親指」と「人差し指」を含む3指以上の関節の動きや、物を掴む・握る力が重要視されます。
2. 初診日の考え方と障害認定日
2-1. 初診日とは
障害年金における初診日とは、「障害の原因となった傷病のために、初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日」のことをいいます。
ここで注意が必要なのは、「関節リウマチ」と診断名がついた日ではなく、関節の違和感や痛みで初めて医師の診察を受けた日が初診日となる点です。
初診日にどの年金制度(国民年金か厚生年金)に加入していたか、保険料納付要件を満たしているかなどを確認するため、初診日は非常に重要で、「受診状況等証明書」などで証明する必要があります。
2-2. 障害認定日とは
障害年金では、初診日から原則として1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。
- 初診日から1年6か月を経過した時点の障害の程度で、障害等級に該当するかを判定します。
- その時点で等級に該当しない場合、「事後重症」として、請求時点の状態で障害等級に該当するかを判定します。
3. 障害年金請求に必要な書類
関節リウマチで障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。
- 障害年金請求書
- 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険 障害給付」
- 初診日が20歳未満、または20歳以上60歳未満で国民年金加入 → 「国民年金 障害基礎年金」
- 診断書(肢体の障害用・様式第120号の3)
- 病歴・就労状況等申立書(病状の経過と生活・仕事への影響を時系列で記載)
- 受診状況等証明書(初診医療機関で作成)
- 年金生活者支援給付金請求書
4. 診断書の重要ポイント
障害年金の認定結果は、診断書の内容に大きく左右されます。関節リウマチ(上肢)で障害年金を請求する際には、次のポイントを押さえておくことが重要です。
4-1. 手指・上肢の可動域と筋力の記載
診断書には、次のような事項が正確に記載されているか確認しましょう。
- 肩関節・肘関節・手関節の他動可動域(屈曲・伸展・外転など)が正しく記載されているか
- 手指関節の変形や拘縮(こわばり・変形でまっすぐ伸ばせない等)の有無
- 握力や筋力低下の程度(測定値がある場合は具体的な数値)
- 痛みのため動かせない関節について、「痛みで測定不能」などの説明があるか
特に、両手関節の可動域が大きく制限されている場合や、手指の変形・骨性強直がある場合には、障害等級に大きく影響します。
4-2. 日常生活動作(ADL)の評価
診断書の裏面にある日常生活動作(ADL)の障害の程度も、認定において非常に重要です。以下のような動作がどの程度可能か、具体的に評価されます。

- 手指の巧緻動作(こまかい動き)
- つまむ
- ひもを結ぶ
- ボタンをとめる
- 手・腕の動作(物を持つ・扱う動き)
- 握る
- タオルを絞る
- さじで食事をする
- 身辺の動作
- 顔を洗う
- 用便の処置をする
- シャツの着脱
- ズボンの着脱
- 靴下を履く
これらの日常生活動作が一人でどの程度行えるのか、どの程度の援助が必要なのかが、障害等級の判断に直結します。医師に日頃の生活状況を具体的に伝えておくことが大切です。
5. 関節リウマチで障害年金を請求した事例集
当事務所で関節リウマチ(上肢)による障害年金を請求した事例の一部をご紹介します。各事例のリンクをクリックすると、詳しい解説ページへ移動します。
40代女性 関節リウマチ・強皮症で障害基礎年金2級を受給
障害等級:2級/事後重症請求
概要:関節リウマチ・強皮症により手足の機能障害が進行していた方について、初診日が30年前で診療録が廃棄されていたものの、紹介状や受診状況等証明書から初診時期を推定し、保険料納付要件を確認したうえで障害基礎年金2級を受給できた事例です。
50代男性 初診日は30年前 第三者証明で障害年金を請求(関節リウマチ)
障害等級:3級/事後重症請求
概要:関節リウマチにより両手首が動かなくなった方について、30年前の初診日をカルテや第三者証明で補強し、障害厚生年金2級を受給できた事例です。
6. 最後に
本ページの内容は、上肢の関節リウマチで障害年金を請求する方法やポイントをまとめたものです。
障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は、次のような専門機関へ確認しながら進めることをおすすめします。
- 最寄りの年金事務所での最新案内
- 厚生労働省・日本年金機構の最新リーフレット
- 障害年金に詳しい社会保険労務士
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。
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