遷延性意識障害(植物状態)で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行
遷延性意識障害(植物状態)で障害年金を請求するために必要な障害認定基準、初診日の考え方、必要書類、診断書の注意点などを専門家が分かりやすく解説します。
この記事では、遷延性意識障害(植物状態)での障害年金請求の重要ポイントをまとめました。
1. 遷延性意識障害(植物状態)の障害認定基準
障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 その他の障害」が定められています。
遷延性意識障害(植物状態)は、重い脳の障害により、長期にわたり次のような状態が続くものです。
- 視線を合わせたり、指示に従った動きができない
- 自発的な返答や意思疎通ができない
- 食事・排泄・更衣・体位変換などの動作ができない
ほぼ終日ベッド上での生活で、日常生活のほとんど全般に常時介護を要する状態であるといえます。
2. 初診日の考え方と障害認定日
2-1 初診日とは
障害年金における初診日とは、「障害の原因となった傷病(遷延性意識障害(植物状態))のために、初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日」のことをいいます。
遷延性意識障害(植物状態)の場合、一般的には次のように考えます。
- 交通事故・転落事故などの外傷:その事故で最初に受診した医療機関の受診日
- 脳出血・脳梗塞などの脳血管疾患:症状(頭痛・麻痺・意識障害など)で初めて受診した日
- その他の病気:その病気で最初に受診した日
初診日にどの年金制度(国民年金か厚生年金)に加入していたか、保険料納付要件を満たしているかなどを確認するため、初診日は非常に重要とされており、受診状況等証明書などで証明する必要があります。
2-2 障害認定日とは
原則として障害認定日は「初診日から1年6か月を経過した日」ですが、遷延性意識障害(植物状態)に至った日から起算して3月を経過した日以後に、医学的観点から、機能回復がほとんど望めないと認められるときが障害認定日になるケースがあります。
遷延性意識状態(植物状態)に至った日とは、次の1~6の状態が3月以上継続していることとされています。
- 自力で移動できない
- 自力で食物を摂取できない
- 糞尿失禁をみる
- 目で物を追うが認識できない
- 簡単な命令には応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通ができない
- 声は出るが意味のある発語ではない
- パターン①:初診日から1年6か月「以内」に遷延性意識障害(植物状態)になっている場合
→ 遷延性意識障害(植物状態)に至った日から3月を経過した日 = 障害認定日(この時点で請求可能) - パターン②:初診日から1年6か月「経過後」に遷延性意識障害(植物状態)になっている場合
→ 初診日から1年6か月経過日 = 障害認定日(原則どおり)
3. 障害年金請求に必要な書類
遷延性意識障害(植物状態)で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。
- 障害年金請求書
- 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険 障害給付」
- 初診日が20歳未満、20歳以上60歳未満の国民年金 → 「国民年金 障害基礎年金」
- 診断書(肢体の障害用・様式第120号の3)
- 病歴・就労状況等申立書(初診日から現在の状態を時系列で記載)
- 受診状況等証明書(初診医療機関)
- 年金生活者支援給付金請求書
4. 診断書の重要ポイント
障害年金の結果は、診断書の内容に大きく左右されます。遷延性意識障害(植物状態)で障害年金を請求する際に重要となるポイントを押さえておきましょう。
4-1 日常生活動作(ADL)の具体的な記載
遷延性意識障害(植物状態)では、すべての日常生活動作(ADL)が全介助となっています。本人による自発的・目的的な動作がないため、すべての動作が×(一人で全くできない)になります。

4-2 症状固定として障害年金を請求する場合
遷延性意識障害(植物状態)に至った日から起算して3月を経過した日以後に障害年金を請求する場合は、診断書に
「遷延性意識障害(植物状態)に至った日」と「症状が固定されている」ことが明確になっていることが重要です。
- 診断書の表面⑦「傷病が治った(症状が固定して治療の効果が期待できない状態を含む。)かどうか」で「症状が治った(固定)の確認に〇」がされており、「遷延性意識障害(植物状態)に至った日から3月以上経過した日」になっているか。
- 診断書の表面⑨「現在までの治療内容、期間、経過、その他参考になる事項」に「遷延性意識障害(植物状態)に該当した日(起算日)が記入」されているか。

5. よくあるつまずきポイント
5-1 初診日・加入制度の確認
- 遷延性意識障害(植物状態)の初診日が把握できているか
- その時点での加入制度(国民年金/厚生年金/共済)や年金保険料納付状況が分かっているか
- 初診の医療機関で受診状況等証明書を書いてもらえるか確認したか
5-2 遷延性意識障害(植物状態)と障害認定日
- 初診日から1年6か月以内に遷延性意識障害(植物状態)に至ったかどうか
- 遷延性意識障害(植物状態)に至った日と1年6か月経過日のどちらが障害認定日になるか整理したか
- 認定日請求(遡及)か事後重症請求か確認したか
5-3 診断書の整合性
- 診断書に遷延性意識障害(植物状態)に至った日が明記されているか
- 日常生活動作(ADL)の評価は適正であるか
6. 遷延性意識障害(植物状態)で障害年金を請求した事例集
遷延性意識障害(植物状態)で障害年金を請求した事例をまとめています。気になる事例のリンクをクリックすると、詳しい解説ページへ移動します。
50代女性 遷延性意識状態(植物状態)に至った日から3月で障害年金を請求
障害等級:1級/障害認定日請求
概要:アレクサンダー病の持病があった人が原付事故で遷延性意識障害(植物状態)となり、障害年金の初診日・障害認定日や相当因果関係の考え方でつまずいたが、事故による外傷として正しく整理し直して障害年金を請求した事例です。
兵庫県川西市 脳挫傷・遷延性意識状態(植物状態)で障害基礎年金1級を受給した事例の詳しい内容を見る
7. 最後に
本ページの内容は、遷延性意識障害(植物状態)で障害年金を請求する方法をまとめたものです。
障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は
- 最寄りの年金事務所での最新案内
- 厚生労働省・日本年金機構の最新リーフレット
- 障害年金に詳しい社会保険労務士
などに確認しながら進めることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。
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