難治性不整脈(ペースメーカー・ICD)で障害年金を請求する方法を解説かなみ社会保険労務士事務所

難治性不整脈(ペースメーカー装着、ICD植込み、人工弁置換術など)は、障害年金の対象となります。障害年金を請求するためには、初診日や心機能の状態などの情報が求められ、正確に手続きを行うことが大切です。ここでは、難治性不整脈の障害認定基準や障害年金の請求手順などについて、わかりやすく解説いたします。

難治性不整脈の障害認定基準

障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)に定められており、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」が定められています。

ここでは、障害認定基準の中から、「心疾患の認定基準」をご紹介します。

等級 障害の程度
1級 病状(障害)が重篤で安静時においても、常時心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)を有し、かつ、一般状態区分表の(オ)に該当するもの
2級 異常検査所見のEがあり、かつ、一般状態区分表の(ウ)又は(エ)に該当するもの


異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち2つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が5つ以上あり、かつ、一般状態区分表の(ウ)又は(エ)に該当するもの

3級 ペースメーカー、ICDを装着したもの


異常検査所見のA、B、C、D、F、Gのうち1つ以上の所見及び病状をあらわす臨床所見が1つ以上あり、かつ、一般状態区分表の(イ)又は(ウ)に該当するもの

一般状態区分表

区分 一般状態区分
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(参考)上記区分を身体活動能力にあてはめると概ね次のとおりです。

区分 身体活動能力
6Mets以上
4Mets以上6Mets未満
3Mets以上4Mets未満
2Mets以上3Mets未満
2Mets未満

異常検査所見

区分 異常検査所見
安静時の心電図において、0.2mV以上のSTの低下もしくは0.5mV以上の深い陰性T波(aVR誘導を除く。)の所見のあるもの
負荷心電図(6Mets未満相当)等で明らかな心筋虚血所見があるもの
胸部X線上で心胸郭係数60%以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの
心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限、先天性異常のあるもの
心電図で、重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見のあるもの
左室駆出率(EF)40%以下のもの
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/ml相当を超えるもの
重症冠動脈狭窄病変で左主幹部に50%以上の狭窄、あるいは、3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄を認めるもの
心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ、今日まで狭心症状を有するもの

障害年金の請求手順

難治性不整脈による障害年金の請求手続きは、以下のような手順で進めます。

  1. 初診日を調べる
  2. 年金事務所などで「保険料納付要件」を満たしていることを確認する
  3. 受診状況等証明書を取得する
  4. 病歴・就労状況等申立書を作成する
  5. 診断書を取得する
  6. その他必要書類を揃える
  7. 年金事務所などに年金請求書を提出する

受診状況等証明書の取得

障害年金を受給するには、障害の原因となる傷病が発生する前に、年金保険料を一定期間納付していることなどが支給要件となるため、初診日が非常に重要になります。

初診日を確認するための書類が「受診状況等証明書」になりますが、診断書を作成した病院が最初に受診した病院と同じである場合、この証明書は必要ありません。

初診時の病院と診断書を作成する病院が異なっている場合には、最初の病院で受診状況等証明書を取得します。

病歴・就労状況等申立書の作成

「病歴・就労状況等申立書」は、診断書や受診状況等証明書とともに、障害の認定において非常に重要な書類です。この書類は、診断書などが一時的な状況を示す「点」であるのに対し、発病から現在までの流れを記載する「線」の役割を持ちます。

発病から初診に至るまでの経緯や初診から現在までの治療経過、現在の病状や日常生活の状況などを具体的に記載することが重要です。原則として5年ごとに区切って記載しますが、転院歴がある場合は通院した病院ごとに記載します。専門用語ではなく、具体的なエピソードや個別の状況を記載していきます。

心臓ペースメーカー・ICDの障害認定日

障害年金の障害認定日(障害の状態を判断する日)は、「初診日から起算して1年6か月後」というのが原則です。しかし、初診日から1年6か月を経過する前に、心臓ペースメーカー、ICD手術をした場合は、障害認定日は通常とは異なっています。

初診日から1年6か月経過前に心臓ペースメーカー、ICDの手術を施した場合

初診日から1年6か月を経過する前に、心臓ペースメーカー、ICDをそう入・置換した場合は「手術を行った日」が障害認定日となります。

障害年金を請求せずに相当期間が経っていても、障害認定日時点の診断書があればその日まで遡って障害年金を受給することが可能になります。

初診日から1年6ヶ月経過後に心臓ペースメーカー、ICDの手術を施した場合

原則通り、「初診日から1年6か月経過した日」が障害認定日となります。

障害認定日に日常生活に著しい支障がない場合は、障害等級に該当せず、障害年金の請求を行った時から受給が始まります。心臓ペースメーカー、ICDの手術を受けても、障害年金の請求をしていない場合は、過去にさかのぼって受給することはできませんので、すぐに請求しましょう。ひと月請求が遅れればひと月分の年金が受け取れないことになります。

診断書の取得

難治性不整脈で障害年金を請求する際に使用する診断書は「循環器疾患の障害用の診断書」になります。

心臓ペースメーカーやICD手術を行っている場合は、手術日の記載漏れがないか確認します。

病態別の検査項目や異常値が障害の程度に該当する場合は、検査成績が必ず記載されていること、一般状態区分の評価も重要になります。

難治性不整脈で障害年金の支給が認定された事例

弊所のサポートによって、障害年金の支給が認定された事例の一部をご紹介します。

障害年金を請求する際は、必要な知識を把握した上で、年金事務所に足を運び、正しい手順で手続きを進める必要があります。

障害年金の手続きは複雑で、一般の方には分かりにくい点も多いため、不安や疑問がある場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。

 

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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