人工肛門や人工膀胱、尿路変更術で障害年金を請求する方法を解説 | かなみ社会保険労務士事務所
人工肛門や人工膀胱の造設、尿路変更術を施した場合、排泄機能に大きな影響を及ぼし、日常生活にも多くの制約をもたらすため、障害年金の対象になりまます。ここでは、人工肛門や新膀胱の障害認定基準と、障害年金の請求手続きのポイントなどについて詳しく解説いたします。
人工肛門・新膀胱の障害認定基準
障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)に定められており、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」が定められています。ここでは、障害認定基準から、「その他の疾患による障害認定基準」をご紹介します。
| 等級 | 障害の程度 |
|---|---|
| 2級 | 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設したもの
人工肛門を増設し、かつ、尿路変更術を施したもの 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする)状態にあるもの |
| 3級 | 人工肛門又は新膀胱を造設したもの若しくは尿路変更術を施したもの |
*全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等により総合的に判断し、さらに上位等級に認定されます。
障害年金の請求手順

人工肛門・新膀胱による障害年金の請求手続きは、以下のような手順で進めます。
- 初診日を調べる
- 年金事務所などで「保険料納付要件」を満たしていることを確認する
- 受診状況等証明書を取得する
- 病歴・就労状況等申立書を作成する
- 診断書を取得する
- その他必要書類を揃える
- 年金事務所などに年金請求書を提出する
受診状況等証明書の取得
障害年金を受給するには、障害の原因となる傷病が発生する前に、年金保険料を一定期間納付していることなどが支給要件となるため、初診日が非常に重要になります。
「初診日」は、自己申告で認められることはなく、客観的な資料により「初診日」または「初診時期」を特定する必要があります。「初診日」を客観的な資料で特定できない場合には、他の資料等の提出によって「初診日」を認めてもらえる可能性があります。大事なことは「初診日」が曖昧なまま、障害年金を請求しないことです。
病歴・就労状況等申立書の作成
「病歴・就労状況等申立書」は、診断書や受診状況等証明書とともに、障害の認定において非常に重要な書類です。この書類は、診断書などが一時的な状況を示す「点」であるのに対し、発病から現在までの流れを記載する「線」の役割を持ちます。
発病から初診に至るまでの経緯や初診から現在までの治療経過、現在の病状や日常生活の状況などを具体的に記載することが重要です。原則として5年ごとに区切って記載しますが、転院歴がある場合は通院した病院ごとに記載します。専門用語ではなく、具体的なエピソードや個別の状況を記載していきます。
人工肛門・新膀胱の障害認定日
障害年金の障害認定日(障害の状態を判断する日)は、「初診日から起算して1年6か月後」というのが原則です。しかし、初診日から1年6か月を経過する前に、人工肛門や新膀胱などの手術をした場合は、障害認定日は通常とは異なっています。
| 手術日 | 障害認定日 |
|---|---|
| 人工肛門を造設または尿路変更術 | 手術日から6か月経過した日 |
| 新膀胱を造設 | 手術日 |
| 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設 | 人工肛門を造設した日から起算して6か月を経過した日「または」新膀胱を造設した日のいずれか遅い日 |
| 人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術 | 人工肛門を造設した日「または」尿路変更術を施した日のいずれか遅い日から6か月を経過した日 |
| 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害状態 | 人工肛門を造設した日「または」完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から6か月経過した日 |
診断書の取得
人工肛門や新膀胱で障害年金を請求する際に使用する診断書は「血液・造血器・その他の障害用の診断書」になります。
人工肛門や新膀胱手術を行っている場合は、手術日の記載漏れがないか確認します。
人工肛門・人工膀胱、尿路変更術を施してもなお、術後の状態がよくない場合など、障害等級3級以上に該当する可能性があります。この場合は、診断書の表面⑫一般状態区分と診断書の裏面⑮の自覚症状や他覚所見、⑯現症時の日常生活活動能力及び労働能力、⑰予後などの記載内容が重要になります。


人工肛門・新膀胱で障害年金の支給が認定された事例
弊所のサポートによって、障害年金の支給が認定された事例の一部をご紹介します。
障害年金を請求する際は、必要な知識を把握した上で、年金事務所に足を運び、正しい手順で手続きを進める必要があります。
障害年金の手続きは複雑で、一般の方には分かりにくい点も多いため、不安や疑問がある場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。
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