人工肛門や人工膀胱、尿路変更術で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所

人工肛門(ストマ)や人工膀胱、尿路変更術で障害年金を請求するために必要な障害認定基準、初診日の考え方、必要書類、診断書の注意点などを専門家が分かりやすく解説します。この記事では、人工肛門・人工膀胱での障害年金請求の重要ポイントをまとめました。

1. 人工肛門・人工膀胱の障害認定基準

障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(その他の疾患による障害)」が定められています。

1-1. 障害等級の基本

等級 障害の状態
2級
  • 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設したもの
  • 人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術を施したもの
  • 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする)状態にあるもの
3級
  • 人工肛門を造設したもの
  • 人工膀胱を造設したもの
  • 尿路変更術を施したもの

2. 初診日の考え方と障害認定日

2-1. 初診日

障害年金における初診日とは、「障害の原因となった傷病のために、初めて医師の診療を受けた日」のことをいいます。
人工肛門や人工膀胱を造設する原因となった傷病(直腸がん、膀胱がん、クローン病など)で初めて受診した日が初診日となります。

  • 血便や腹痛などの自覚症状で消化器内科や肛門科を受診した日
  • 血尿や排尿困難で泌尿器科を受診した日
  • 健康診断で異常を指摘され、精密検査のために病院を受診した日

2-2. 障害認定日

障害年金では、初診日から1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。

  • 初診日から1年6か月を経過した時点の障害の程度で、障害等級に該当するかを判定
  • その時点で該当しない場合、「事後重症」として、請求時点の状態で障害等級に該当するかを判定

2-3. 障害認定日の特例

初診日から1年6か月以内に人工肛門・人工膀胱・尿路変更術を行った場合は障害認定日の特例があります。

対象となる手術 特例による障害認定日
人工肛門を造設 手術日から6か月経過した日
尿路変更術を実施 手術日から6か月経過した日
新膀胱を造設 手術日
人工肛門 + 新膀胱 A・Bのいずれか遅い日

A:人工肛門の手術日から6か月経過した日
B:新膀胱の手術日
人工肛門 + 尿路変更術 「人工肛門の手術日」と「尿路変更術実施日」のうち、
遅い方の日から6か月経過した日
人工肛門 + 完全排尿障害 「人工肛門の手術日」と「完全排尿障害に至った日」のうち、
遅い方の日から6か月経過した日

3. 障害年金請求に必要な書類

人工肛門・人工膀胱で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。

  • 障害年金請求書
    • 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険障害給付」
    • 初診日が20歳未満、20歳以上65歳未満の国民年金 → 「国民年金障害基礎年金」
  • 診断書(血液・造血器・その他の障害用・様式第120号の7)
  • 病歴・就労状況等申立書(初診日から請求日までの経過、日常生活の困難さ、就労状況などを記載)
  • 受診状況等証明書(初診医療機関)
  • 年金生活者支援給付金請求書

4. 診断書の重要ポイント

障害年金の審査では、診断書の記載内容が非常に重要です。

手術日の記載

障害認定日の特例に関わるため、いつ手術をしたのか正確に記載されているか確認が必要です。

診断書の手術日記載欄

現在の病状と日常生活状況

人工肛門(ストマ)や人工膀胱、尿路変更術は原則3級ですが、術後の経過が芳しくなく、他疾患の合併などで2級以上に該当する可能性がある場合は、以下の記載が特に重要になります。

  • 一般状態区分
  • 排便・排尿のコントロール状況
  • 自覚症状や他覚所見
  • 現症時の日常生活活動能力及び労働能力
  • 予後

5. 人工肛門・人工膀胱で障害年金を請求した事例集

当事務所による人工肛門・人工膀胱などで障害年金を請求した事例の一部をご紹介します。各事例のリンクをクリックすると、詳しい解説ページへ移動します。

50代男性  前立腺がん・骨盤内臓全摘後で障害厚生年金2級を受給

障害等級:障害厚生年金2級/障害認定日請求

概要:前立腺がんにより人工肛門と尿路変更術を行った方です。障害認定日の原則は初診日から1年6ヶ月を経過した日ですが、障害認定日の特例に該当するものとしてスムーズに障害厚生年金2級の受給決定を得ることができました。

兵庫県川西市 前立腺がん・骨盤内臓全摘後で障害厚生年金2級を受給

40代女性  クローン病(人工肛門)で障害基礎年金2級を受給

障害等級:障害基礎年金2級/事後重症請求

概要:クローン病により人工肛門・経管栄養となった方の事例です。過去にご自身で請求した際は「保険料納付要件」を満たせず不支給でしたが、初診日を「生後すぐ」に見直すことで納付要件をクリアしました。また、人工肛門は原則3級ですが、全身状態の悪さを詳細に申し立て、上位の障害基礎年金2級を受給しました。

6. 最後に

本ページの内容は、人工肛門(ストマ)や人工膀胱、尿路変更術で障害年金を請求する方法をまとめたものです。

障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は、以下の場所で確認、あるいは活用し、適切な準備を進めることをおすすめします。

  • 最寄りの年金事務所での相談
  • 日本年金機構の最新情報の確認
  • 障害年金に詳しい社会保険労務士への相談

※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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