大動脈疾患で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行

大動脈疾患で障害年金を請求するために必要な障害認定基準、初診日の考え方、必要書類、診断書の注意点などを専門家が分かりやすく解説します。この記事では、大動脈疾患での障害年金請求の重要ポイントをまとめました。

1. 大動脈疾患の障害認定基準

障害年金に該当する心疾患の障害については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 心疾患による障害」が定められています。

1-2. 障害等級の基本

等級 障害の状態の目安
3級
  • 胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)または胸部大動脈瘤に対して、人工血管置換術(人工血管の挿入)を受けており、肉体労働は制限を受けるが、歩行や軽労働はできる状態
  • 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併している場合
  • 「難治性高血圧」とは、塩分制限などの生活習慣の見直しを行った上で、3種類以上の降圧薬を適切な用量で継続して服用してもなお、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の状態が続く場合を指します。

2. 初診日の考え方と障害認定日

2-1. 大動脈疾患における初診日

障害年金における初診日とは、「障害の原因となった傷病(大動脈疾患)のために、初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日」をいいます。

大動脈疾患の場合、次のような日が初診日となるケースが一般的です。

  • 突然の激しい胸痛・背部痛などで救急外来を受診した日
  • 胸の痛み、背中の痛み、動悸、息切れなどの症状で、初めて病院を受診した日
  • 健康診断や人間ドックで大動脈瘤の疑い・高度高血圧などを指摘され、循環器科を受診した日

2-2. 障害認定日について

基本的には、初診日から1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。

  • 初診日から1年6か月を経過した時点の障害の程度で、障害等級に該当するかを判定
  • その時点で該当しない場合、「事後重症」として、請求時点の状態で障害等級に該当するかを判定

2-3. 人工血管手術の障害認定日

原則として障害認定日は「初診日から1年6か月を経過した日」ですが、大動脈疾患により人工血管手術を行った場合、手術日が障害認定日になるケースがあります。

  • パターン①:初診日から1年6か月「以内」に人工血管手術をした場合
    → 人工血管の手術日 = 障害認定日(この時点で請求可能)
  • パターン②:初診日から1年6か月「経過後」に人工血管手術をした場合
    → 初診日から1年6か月経過日 = 障害認定日(原則どおり)

大動脈疾患で人工血管手術を受けた場合、手術日と1年6か月経過日のどちらが障害認定日かで、請求のタイミングや遡及の可能性が変わることになります。

3. 障害年金請求に必要な書類

大動脈疾患で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。

  • 障害年金請求書
    • 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険障害給付」
    • 初診日が20歳未満、20歳以上60歳未満の国民年金 → 「国民年金障害基礎年金」
  • 診断書(循環器疾患の障害用・様式第120号の6-(1))
  • 病歴・就労状況等申立書(病歴や病状、生活・仕事への影響を時系列で記載)
  • 受診状況等証明書(初診医療機関)
  • 年金生活者支援給付金請求書

4. 診断書の重要ポイント

障害年金の結果は、診断書の内容に大きく左右されます。大動脈疾患で障害年金を請求する際に重要となるポイントを押さえておきましょう。

4-1. 人工血管の記載

診断書裏面の「⑫ 疾患別所見」に、人工血管置換術・ステントグラフトの装着の有無・装着日の記載漏れがないか確認しましょう。

4-2. 一般状態区分表(日常生活動作)

大動脈疾患により人工血管(ステントグラフト)手術を受けている場合、「一般状態区分表」の評価も重要です。障害の程度が3級になるのは、「イ」以上の状態となります。

  • :軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行や軽労働はできる。
  • :歩行や身の回りのことはできるが、時に介助が必要で軽労働はできない。

医師に、日常生活の実際の状況を正確に伝えることが大切です。

5. 大動脈疾患で障害年金を請求した事例集

当事務所による大動脈疾患で障害年金を請求した事例の一部をご紹介します。各事例のリンクをクリックすると、詳しい解説ページへ移動します。

兵庫県川西市 胸部大動脈解離(Stanford分類A型)で障害厚生年金3級を受給

障害等級:障害厚生年金3級/障害認定日請求

概要:胸部大動脈解離(Stanford A型)で緊急手術(上行大動脈人工血管置換術・大動脈弁つり上げ術)を受けた方について、初診日と同日に人工血管手術が行われ、その日が障害認定日となった事例です。

兵庫県川西市 急性大動脈解離で障害厚生年金3級を受給

障害等級:障害厚生年金3級/障害認定日請求

概要:急性大動脈解離で救急搬送され、その日のうちに上行大動脈人工血管置換術を受けた方が、
当日のカルテと診断書をもとに、5年遡って障害厚生年金3級が認められた事例です。

6. 最後に

本ページの内容は、大動脈疾患で障害年金を請求する方法をまとめたものです。

障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は

  • 最寄りの年金事務所での最新案内
  • 厚生労働省・日本年金機構の最新リーフレット
  • 障害年金に詳しい社会保険労務士

などに確認しながら進めることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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