大動脈疾患で障害年金を請求する方法を解説 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行

大動脈疾患により労働に著しい支障が出ている場合、障害年金の対象となる可能性があります。ここでは、大動脈疾患の障害認定基準や、障害年金の請求手続きの具体的な流れや注意点について、詳しく解説していきます。障害年金を受給することで生活の安定を図るために、ぜひ参考にしてください。

大動脈疾患の障害認定基準

障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)に定められており、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」が定められています。

ここでは、障害認定基準の中から、「心疾患の認定基準」をご紹介します。

等級 障害の程度
3級
  • 胸部大動脈解離(Stanford分類A型・B型)や胸部大動脈瘤により、人工血管(ステントグラフトも含む)を挿入し、かつ、一般状態区分表の(イ)又は(ウ)に該当するもの。
  • 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併したもの

*難治性高血圧とは、塩分制限などの生活習慣の修正を行った上で、適切な薬剤3薬以上の降圧薬を適切な用量で継続投与しても、なお、収縮期血圧が 140 mmHg 以上又は拡張期血圧が 90mmHg 以上のものをいいます。

一般状態区分表

区分 一般状態区分
(ア) 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
(イ) 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの例えば、軽い家事、事務など
(ウ) 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
(エ) 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
(オ) 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

障害年金の請求手順

大動脈疾患による障害年金の請求手続きは、以下のような手順で進めます。

  1. 初診日を調べる
  2. 年金事務所などで「保険料納付要件」を満たしていることを確認する
  3. 受診状況等証明書を取得する
  4. 病歴・就労状況等申立書を作成する
  5. 診断書を取得する
  6. その他必要書類を揃える
  7. 年金事務所などに年金請求書を提出する

受診状況等証明書の取得

障害年金を受給するには、障害の原因となる傷病が発生する前に、年金保険料を一定期間納付していることなどが支給要件となるため、初診日が非常に重要になります。

初診日を確認するための書類が「受診状況等証明書」になりますが、診断書を作成した病院が最初に受診した病院と同じである場合、この証明書は必要ありません。

初診時の病院と診断書を作成する病院が異なっている場合には、最初の病院で受診状況等証明書を取得します。

病歴・就労状況等申立書の作成

「病歴・就労状況等申立書」は、診断書や受診状況等証明書とともに、障害の認定において非常に重要な書類です。この書類は、診断書などが一時的な状況を示す「点」であるのに対し、発病から現在までの流れを記載する「線」の役割を持ちます。

発病から初診に至るまでの経緯や初診から現在までの治療経過、現在の病状や日常生活の状況などを具体的に記載することが重要です。原則として5年ごとに区切って記載しますが、転院歴がある場合は通院した病院ごとに記載します。専門用語ではなく、具体的なエピソードや個別の状況を記載していきます。

人工血管(ステントグラフト)の障害認定日

障害年金の障害認定日(障害の状態を判断する日)は、「初診日から起算して1年6か月後」というのが原則です。しかし、初診日から1年6か月を経過する前に、大動脈疾患で人工血管(ステントグラフと)手術をした場合は、障害認定日は通常とは異なっています。

初診日から1年6か月経過前に人工血管(ステントグラフと)手術を施した場合

初診日から1年6か月を経過する前に、人工血管(ステントグラフと)手術をした場合は「手術を行った日」が障害認定日となります。

障害年金を請求せずに相当期間が経っていても、障害認定日時点の診断書があればその日まで遡って障害年金を受給することが可能になります。

初診日から1年6ヶ月経過後に人工血管(ステントグラフと)の手術を施した場合

原則通り、「初診日から1年6か月経過した日」が障害認定日となります。

障害認定日に日常生活に著しい支障がない場合は、障害等級に該当せず、障害年金の請求を行った時から受給が始まります。人工血管(ステントグラフと)手術を受けても、障害年金の請求をしていない場合は、過去にさかのぼって受給することはできませんので、すぐに請求しましょう。ひと月請求が遅れればひと月分の年金が受け取れないことになります。

大動脈疾患で障害年金2級以上の認定

大動脈疾患では、特殊な例を除いて心不全を呈することはなく、また最近の医学の進歩はありますが、完全治癒を望める疾患ではありません。従って、一般的には 1・2 級には該当しないとされています。このため、大動脈疾患による障害年金の請求は、初診日に厚生年金に加入していることがポイントになります。ただし、初診日が国民年金の場合でも、大動脈疾患に関連した合併症(周辺臓器への圧迫症状など)の程度や手術の後遺症によっては、障害年金の2級以上に認定される場合もあります。

診断書の取得

大動脈疾患で障害年金を請求する際に使用する診断書は「循環器疾患の障害用の診断書」になります。

人工血管(ステントグラフと)手術を行っている場合は、手術日の記載漏れがないか確認します。

病態別の検査項目や異常値が障害の程度に該当する場合は、検査成績が必ず記載されていること、一般状態区分の評価も重要になります。

ポイント3 診断書で確認しておく項目

大動脈疾患で障害年金を申請(請求)する際に使用する診断書は「診断書(循環器疾患の障害用)」になります。

書面審査である障害年金では診断書は非常に重要なものです。大動脈疾患によって症状が悪い場合でも、診断書の誤記や記入漏れなどがあった場合には不支給になってしまうこともあります。

障害の認定で必要な項目は、⑪2一般状態区分、⑫疾患別疾病の4大動脈疾患の記載も必要になります。大動脈疾患の治療で信頼している医師であっても、障害年金の申請(請求)では必ず診断書を確認するようにしましょう。

 

大動脈疾患で障害年金の支給が認定された事例

弊所のサポートによって、障害年金の支給が認定された事例の一部をご紹介します。

障害年金を請求する際は、必要な知識を把握した上で、年金事務所に足を運び、正しい手順で手続きを進める必要があります。

障害年金の手続きは複雑で、一般の方には分かりにくい点も多いため、不安や疑問がある場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。

 

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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