肺気腫で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行

肺気腫で障害年金を請求するために必要な障害認定基準、初診日の考え方、必要書類、診断書の注意点などを専門家が分かりやすく解説します。この記事では、肺気腫での障害年金請求の重要ポイントをまとめました。

1. 肺気腫の障害認定基準

障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 呼吸器疾患による障害」に定められています。

1-1. 検査数値による認定の目安

動脈血ガス分析等の結果に基づく目安は以下の通りです。

等級 障害の状態の目安
1級
  • 動脈血O2分圧が55Torr以下
  • または上記と同程度の状態で、常時介護を必要とするもの
2級
  • 動脈血O2分圧が60Torr〜56Torr
  • または上記と同程度の状態で、日常生活が著しく制限されるもの
3級
  • 動脈血O2分圧が70Torr〜61Torr
  • 呼吸困難のため、労働に著しい制限を受けるもの

※上記は目安であり、予測肺活量1秒率(FEV1.0%)などの数値や自覚症状も総合的に考慮されます。

呼吸不全の状態
肺気腫により呼吸不全となっている場合は、動脈血ガス分析値が異常値になっており、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態といえます。障害年金の請求時には動脈血ガス分析値の値を知る必要があります。

1-2. その他検査成績

障害の程度は、次のような情報を総合して判断されます。

  • 自覚症状(息切れ、咳・痰、安静時や体動時の呼吸困難など)
  • 他覚所見(チアノーゼ、呼吸数増加、低酸素血症など)
  • 一般状態(どの程度の日常生活が自力でできるか)
  • 治療内容や病状の経過(在宅酸素療法の有無)

2. 初診日の考え方と障害認定日

2-1. 肺気腫における初診日

障害年金における初診日とは、「障害の原因となった傷病(肺気腫)のために、初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日」のことをいいます。

肺気腫は、長年の喫煙習慣などが原因で徐々に進行するため、初診日の特定が難しいケースがありますが、一般的には次のような日が初診日にあたります。

  • 「咳や痰が止まらない」「坂道で息切れがする」などの症状で内科や呼吸器内科を受診した日
  • 健康診断や人間ドックの胸部レントゲン検査で異常を指摘され、医療機関を受診した日
  • 風邪だと思って受診したが、治りが悪く後に肺気腫と診断された場合、その最初の受診日

2-2. 障害認定日について

障害年金では、初診日から1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。

  • 初診日から1年6か月を経過した時点の障害の程度で、障害等級に該当するかを判定
  • その時点で該当しない場合、「事後重症」として、請求時点の状態で障害等級に該当するかを判定

初診日から1年6ヶ月「以内」に在宅酸素療法を開始した場合は、在宅酸素療法を開始した日が「障害認定日」となります。

3. 障害年金請求に必要な書類

肺気腫で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。

  • 障害年金請求書
    • 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険障害給付」
    • 初診日が20歳未満、20歳以上60歳未満の国民年金 → 「国民年金障害基礎年金」
  • 診断書(呼吸器疾患の障害用・様式第120号の5)
  • 病歴・就労状況等申立書(病状の経過や症状、生活・仕事への影響を時系列で記載)
  • 受診状況等証明書(初診医療機関)
  • 年金生活者支援給付金請求書

4. 診断書の重要ポイント

審査において最も重視される診断書の記載ポイントです。

4-1. 動脈血ガス分析検査の実施

肺気腫の等級判定で重視される検査数値です。原則として、安静状態の計測値とされており、酸素吸入施工中の値であるときは、施行中の値を記入します。

4-2. 一般状態区分表(日常生活動作)

診断書の裏面にある「一般状態区分表」の評価も重要です。

  • :軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行や軽労働はできる。
  • :歩行や身の回りのことはできるが、時に介助が必要で軽労働はできない。
  • :身の回りのことはある程度できるが、しばしば介助が必要になっている。
  • :身の回りのことはできず、常に介助が必要になっている。

医師に、「着替えや入浴で息切れして休む」「平地を少し歩くだけで苦しい」といった日常生活の具体的な困難さを正しく伝えることが大切です。

5. 最後に

本ページの内容は、肺気腫で障害年金を請求する方法をまとめたものです。

障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は、以下の場所で確認しながら進めることをおすすめします。

  • 最寄りの年金事務所での最新案内
  • 厚生労働省・日本年金機構の最新リーフレット
  • 障害年金に詳しい社会保険労務士

※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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