てんかんで障害年金を請求(申請)する場合の注意点を解説 | かなみ社会保険労務士事務所
てんかん発作で日常生活に著しい支障が出ている場合には障害年金の対象になります。
てんかんによる障害年金の請求(申請)するためのポイントや注意点を解説します。
てんかんの障害認定基準
障害年金におけるてんかん発作の分類
てんかんの障害認定基準は、発作症状のタイプとして4つのタイプに分類されています。
A | 意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作 |
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B | 意識障害の有無を問わず、転倒する発作 |
C | 意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作 |
D | 意識障害はないが、随意運動が失われる発作 |
発作症状のタイプによる障害年金の等級目安
上記4タイプの発作症状と発生頻度により各等級の目安が定めらています。
※3級は障害厚生年金のみ 支給される障害年金額は等級別の障害年金の年金額をご参照ください。
等級 | 状態 |
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1級 | 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の介護が必要なもの |
2級 | 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの |
3級 | 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの |
その他 障害認定基準で定められている事項
- てんかんは、発作と精神神経症状及び認知障害が相まって出現することがあります。この場合、精神神経症状や認知障害については、「症状性を含む器質性精神障害」に準じて認定されます。
- てんかん発作が出現し、発作間欠期に精神神経症状や認知障害を有する場合には、治療及び病状の経過、日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定されます。
- てんかんとその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行われず、諸症状を総合的に判断して認定されます。
障害年金の請求(申請)の進め方
てんかんで障害年金を請求(申請)する場合、手続きの進め方は次のようになります。
- 「初診日」を調べる。
- 「受診状況等証明書」取得する。
- 「病歴・就労状況等申立書」作成する。
- 「診断書(精神の障害用)」の作成を病院に依頼する。
具体的な手順はこちらのページで解説していますので、ご確認ください。
てんかんで障害年金を請求(申請)する際のポイント
ポイント1 発作症状と発作頻度だけで障害の等級は決まらない
てんかん発作での障害年金の審査では、発作症状のタイプ以外にも、日常生活動作がどの程度損なわれ、そのためにどのような社会的不利益を被っているのかという、社会的活動能力の損減を重視した観点から認定されます。
障害認定基準で定められている「発作症状」と「発作頻度」だけで障害の等級は決定されるものではありません。
ポイント2 日常生活動作の判定資料は診断書です
てんかん発作により日常生活動作がどの程度損なわれているのか、これを確認するための資料として、障害年金用の診断書が使用されます。
具体的には、精神の障害用の診断書の裏面にある「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」によって、日常生活動作の程度が評価されています。
発作症状のタイプが2級の例示であるにもかかわらず、日常生活能力の判定が軽度であったため、「日常生活に制限を受けるもの」には該当せずに3級となることもあります。
ポイント3 てんかん発作の間欠期は日常生活は可能?
てんかん発作の場合、発作がないときだけをみれば、日常生活能力の判定は、ほとんどの項目が「できる」とされるはずです。
逆に発作時や発作中は、「助言や指導をしてもできない」になるのではないでしょうか。
医師に診断書を依頼する際は、発作の頻度とともに、発作間欠期だけでなく、発作時も含めて日常生活能力の判定をお願いするようにしておきましょう。
ポイント4 病歴・就労状況等申立書の記載内容は重要です
てんかん発作で障害年金を請求(申請)する場合、「病歴・就労状況等申立書」も重要です。
発作頻度に加えて、発作間欠期で日常生活動作がどの程度損なわれており、そのためにどのような社会的不利益を被っているのかを審査側に伝えましょう。
小さなことでもいいのでできる限りの事を書きましょう。
病歴・就労等申立書の内容によって不支給になってしまうことや、等級が決まる場合もありますので、気を抜かずに丁寧に記載していきましょう。
てんかんで障害年金をサポートした事例集
弊所が担当させていただいた案件を一部ご紹介いたします。
てんかん・高次脳機能障害で障害厚生年金2級が決定
脳出血で倒れて以降てんかんの発作が続くようになった。
また、計算や近時記憶の障害、同時処理思考行動ができなくなるなどの高次脳機能障害の症状も出るようになった。
てんかんの場合、発作がないときだけを見れば日常生活に支障が出ているとは言えず、逆に発作時では、身辺の危険とともに日常生活に大きな支障が出ていることになる。
診断書の作成を医師に依頼する時は、発作の頻度とともに、日常生活能力の判定の考え方を丁寧に説明した。
病歴・就労状況等申立書においても、発作が起こった時の状況や頻度、発作がないときには高次脳機能障害により日常生活に支障がでていることを具体的に申立てた。
ご本人様が思っておられた以上の結果が出たことで大変喜んでいただけた案件。(障害厚生年金2級)
てんかん発作で約40年間 障害年金を未請求 初診日証明が非常に困難だった事例
「17歳時」に初めて意識を失う発作があった。以降、1か月に1度の頻度で全身のけいれん発作や意識を失う発作が続くようになった。
当初、20歳前傷病だと思われたが、年金記録に厚生年金の加入期間の漏れが見つかり、初診時には厚生年金の被保険者であることが分かった。
このため、20歳前傷病から障害厚生年金での請求に変わり、初診日証明の難易度が高まることになった。
診療録の開示請求を行ったが、「17歳」が初診だということ以外は分からなかった。
このため、「初診日があると確認された一定の期間中、同一の公的年金制度に継続的に加入しており、かつ、当該期間中のいずれの時点においても、障害年金を支給するための保険料納付要件を満たしている場合は、当該期間中で請求者が申し立てた初診日を認めることができることとする。」という、平成28年に初診日証明に関して変更された取扱いを利用することにした。
「17歳時」のどの期間も厚生年金に加入していること、保険料納付要件(旧法・新法)を満たしていることを主張し、初診(発病)の「年」だけを確定(発病日を18歳到達前々日 17歳の最終日)して請求を行った。本人請求では不可能と思われる請求であった。(障害厚生年金2級)
面倒な障害年金の請求は、専門家に任せてしまうのも一考です
障害年金を請求(申請)するためには、様々な書類の準備や手続きが必要です。それぞれの書類にはチェックしておきたい項目がいくつもあります。
初診日の証明ひとつでも、カルテの保存期限(5年)を超過している場合には初診日の証明ができないこともあります。そういった時には次の転院先の医療機関で証明が取れるのか、仮に取れたとしても、先の医療機関の初診日に関する記載はあるのかなど確認しなければいけません。
おそらく、一生に一度しかないような障害年金の請求(申請)手続きで、何度も年金事務所や病院に足を運び、初診日を証明するための書類を揃えていくのは大変だと思います。また、慣れない書類の準備や請求の手続きをするのは困難な場合も多いでしょう。
そんな時は、確実な手順で障害年金の請求(申請)手続きを進めてくれる専門家に依頼することをおすすめします。
かなみ社会保険労務士事務所(川西市)は、兵庫・大阪での障害年金の請求(申請)をサポートいたします
対象地域は大阪・兵庫(詳細はこのページ下の対応地域をご覧ください)で、無料相談や出張相談を承っております。
その他の地域でも対応が可能な場合もございますので、お気軽にご利用ください。
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