知的障害(精神遅滞)で障害年金を請求(申請)する方法やポイントを解説 | かなみ社会保険労務士事務所

知的障害(精神遅滞)も障害年金の対象になります。
ここでは、知的障害(精神遅滞)で障害年金を請求(申請)する場合の障害年金の基準や請求(申請)手続きのポイントを解説します。

知的障害(精神遅滞)の障害認定基準は

知的障害(精神遅滞)の障害認定基準は、次のようにされており、それぞれの等級によって支給額が決まります。

支給される障害年金額は等級別の障害年金の年金額をご参照ください。

等級 状態
1級 知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
2級 知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの
3級 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

・知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断されます。

・日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断されます。

このページTOPへ

障害年金の審査で考慮される項目

考慮すべきこと

障害年金の審査では、次のような要素を考慮され、最終的な等級が決定されることになります。

障害年金を請求する際は、これらの考慮される項目を、「診断書」や「病歴・就労状況等申立書」などによって伝える必要があります。

  • 病状又は病態像
    • 知能指数が考慮されますが、知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度が考慮されます。
    • 不適応行動を伴う場合には、診断書の ⑩「ア 現在の病状又は状態像」ⅶ知能障害等またはⅷ発達障害関連症状と合致する具体的記載があれば、それが考慮されます。
  • 療養状況
    著しい不適応行動を伴う場合や精神疾患が併存している場合は、その療養状況が考慮されます。
  • 生活環境
    家族等からの日常生活上の援助や福祉サービスの有無、施設入所の有無や入所時の状況などが考慮されます。
  • 就労状況
    • 労働に従事していることをもって、 直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮し、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認されたうえで日常生活能力が判断されます。
    • 仕事の内容が専ら単純かつ反復的な業務である場合はそれが考慮されます。
    • 仕事場での意思疎通の状況が考慮されます。
  • その他
    • 発育や養育歴、教育歴、療育手帳の有無や区分などが考慮されます。
    • 中高年になってから知的障害が判明し、障害年金を請求する場合については、幼少期の状況が考慮されます。

このページTOPへ

精神の障害に係る等級判定ガイドライン

精神の障害年金の認定で定められている「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、「精神の障害用」診断書の裏面にある「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」に応じて等級の目安が定められています。

具体的には、「日常生活能力の判定」の4段階評価について、障害の程度の軽い方から1~4の数値に置き換えて平均値を算出し、「日常生活能力の程度」の(1)~(5)と合わせて等級の目安を定めます。

ただし、等級の目安はあくまで参考値であり、実際の等級は、診断書のその他の記載内容や病歴・就労状況等申立書なども含めて総合的に評価されて決定されます。つまり、等級の目安とは異なる認定結果となることもありますので注意する必要があります。


障害等級の目安

例えば、下記のようなの評価の場合、日常生活能力の判定は「(3+3+3+2+2+2+3)÷7=2.57が平均値となり、日常生活能力の程度の(3)と合わせて、等級の目安は「2級または3級」程度とされます。

このページTOPへ

障害年金の請求(申請)の進め方

知的障害(精神遅滞)で障害年金を請求(申請)する場合、手続きの進め方は次のようになります。

  1. 病歴・就労状況等申立書」作成する。
  2. 診断書(精神の障害用」の作成を病院に依頼する。

*初診日証明(受診状況等証明書)の取得は不要です。

具体的な手順はこちらのページで解説していますので、ご確認ください。

このページTOPへ

知的障害(精神遅滞)で障害年金を請求(申請)するポイント

ポイント1 障害年金の初診日は?

知的障害(精神遅滞)の場合、他の疾病とは異なり、先天性または出生後の早い時期に何らかの原因で生じる障害ですので、初診日がいつであるかに関わらず、「20歳前傷病」として扱われ、初診日証明(受診状況等証明書)は必要ありません。

 

ポイント2 障害年金を請求(申請)できるのは20歳以降

知的障害(精神遅滞)は先天性の障害であるため、初診日に関わらず、障害認定日は20歳の誕生日前日になります。

障害認定日請求の場合、20歳の誕生日前後3か月以内の診断書を準備して障害年金を請求(申請)します。

小中学校は普通学校に通っており、20歳を過ぎてから社会生活などに問題があると言われ、病院で検査を受けたところ、知的障害と診断されることもあります。

このような場合には、初診日から1年6か月経過した後でなければ障害年金は請求(申請)できないという訳ではありません。

知的障害は、先天性のものとされますので、1年6か月を経過するまで待つ必要はなく、障害年金をすぐに請求(申請)することができます。

 

ポイント3 20歳時の診断書を取得できない場合

20歳到達後すぐに障害年金を請求(申請)する場合は問題はないのですが、20歳から相当期間経ってから障害年金を請求(申請)する場合、20歳前後の診断書を取得できない場合があります。

知的障害の場合、継続的に医療機関に通院する必要性はないので、通院していない時の診断書を医師に作成してもらうことができないからです。

通常、知的障害は、現在(請求時点)と障害認定日(20歳時点)との間で、大きく障害の程度に変化はないと思います。

したがって、本来は、現在(請求時点)の診断書から障害認定日の障害状態が判断できる場合は、20歳時に遡れるはずです。

しかしながら、現状では20歳到達時(障害認定日現症)の診断書が取れないと障害認定日への遡及請求は認められず、障害年金を請求(申請)した月から支給するとされています。

ただ、20歳時点での診断書が取得できなくても、特別児童扶養手当の診査時の資料はないでしょうか。こういったものが、たとえ20歳3ヶ月前後の資料ではなくても、客観的資料として認められ、障害認定日から支給が認められる可能性もあります。

20歳時点で通院していないからと、障害認定日の請求(申請)を諦めることのないようにしたいものです。

 

ポイント4 障害年金の請求時に就労している場合

障害年金の障害認定基準には、就労している場合について次のような記載があります。

「就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。
したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」

しかし、現実には就労している場合、その事実だけをもって不支給の決定をされる場合があります。

医師に診断書の作成を依頼する前には、就労の形態や労働の具体的内容、援助の必要性などをしっかりと申し立てるようにしましょう。

 

ポイント5 軽度知的障害(精神遅滞)は障害年金の対象にならないのか

軽度知的障害(精神遅滞)の場合、障害年金は受給できないという誤解があります。

しかし、このような方でも、それまでの養育環境や発育経過などによっては日常生活に多くの援助が必要になっているような方もあります。

障害認定基準でも「知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する」とされています。

つまり、下記のような軽度の精神遅滞( IQ50~70)の事例であっても、それまでの養育環境・発育経過などによって、日常生活に多くの援助が必要になっている方も障害年金の対象になるということです。


Aさんの事例(WAIS-III 全IQ68)

小中学校、高校は普通学級で勉強をしていたが成績は常に下の方だった。

高校を卒業後は工場でフルタイム就労をしていたが、仕事が覚えられず、簡単な機械操作以外はできず、常に上司から叱責され、最後には呆れられるようになっていた。
幼少期から数字が苦手で計算ができず、仕事も日常生活もうまくできないのは何か障害があるのではと思って病院を受診。

発達検査を行ったところ発達障害であり、軽度精神遅滞だと分かった。
医師からは、発達障害よりも精神遅滞の方で日常生活に支障が出ているため、精神遅滞で診断書を記入するとのことだった。

「病歴・就労状況等申立書」では、就労していた頃の状況を細かく申立てた。

(障害基礎年金2級)

このページTOPへ

知的障害(精神遅滞)で障害年金をサポートした事例集

弊所が担当させていただいた案件を一部ご紹介いたします。

障害の程度が不該当で不支給  再請求によって障害基礎年金2級が決定

軽度知的障害の方で、本人請求をされたが、障害の程度が軽度であることから不支給になっていた。
おどおどしているが、話しぶりからは日常生活能力は自立しているように感じられた。しかし、時間をかけて詳細に話を聞いていくと、日常生活や就労上の困難さが明確になった。
日常生活能力や就労状況を医師に詳しく伝えたことで、請求への理解と協力を得ることができた。

請求の際は就労に関しての申立てを別途作成した。

前回の診断書の内容が再請求に影響されるか心配されたが、無事障害基礎年金を受給していただくことができた。

(障害基礎年金2級)

 

中等度精神遅滞の方で単身生活 障害基礎年金2級が決定

周囲は知的障害ではないかと思っていたが、両親は頑なに否定していた。

成人以降はアルバイトや正社員を経験するも、仕事がうまくできずに短期間で解雇されていた。
父親が死亡後、請求人の将来を心配した母親が任意後見契約を利用。その後、母親が施設に入所した後は独居となっていた。

独居後、入浴や掃除方法、洗濯、炊事がままならず、衣服はカビで真っ黒で、床にはゴミやお金が散乱した状態だった。

60歳時に療育手帳を取得。現在は、週7日の入浴介助や生活援助を受けていた。
障害福祉サービスを利用後、様々な援助を受けていたことで、ある程度の生活水準はできており、本人からのヒアリングでも生活に支障がないという話だった。

しかし、サービス提供責任者から日常生活の状況をヒアリングしたところ、「できている」という話だったが「まったくできていない」ことが分かった。
請求時には、普段の日常生活状況を「第三者の申立て」として提出した。

独居となってから請求までの期間が長かったため、単身生活が可能だと判断されないように、日常生活の状況を詳細に申し立てた。

(障害基礎年金2級)

>> その他の知的障害(精神遅滞)の方の障害年金事例集


この記事がお役に立ちましたらシェアをお願いします。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク理事

このページTOPへ

前後記事&カテゴリ記事一覧

このページTOPへ