統合失調症で障害年金を申請(請求)する方法を解説 | かなみ社会保険労務士事務所

統合失調症により日常生活に支障がでている場合には障害年金の対象になります。

ここでは、統合失調症になった場合の障害年金の基準や申請(請求)手続きのポイントを解説します。

統合失調症の障害認定基準

統合失調症の障害認定基準は次のようになっており、それぞれの等級によって支給額が決まります。※3級は障害厚生年金のみ 支給される障害年金額は等級別の障害年金の年金額をご参照ください。

等級 障害の程度
1級 高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの
2級 残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級 残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの。

・統合失調症は、予後不良の場合もあり、障害年金で定める障害状態であると認められるものが多いと言えます。しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見られることもあり、また、その反面急激に憎悪し、その状態を維持することもあります。このため、統合失調症として認定を行う場合には、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮されます。

・日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断されることになります。

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障害年金の審査で考慮される項目

統合失調症に関する障害年金の審査では、以下の要素が考慮され、等級が決定されることになります。

障害年金の申請(請求)時には、これらの項目を「診断書」や「病歴・就労状況等申立書」などを通じて審査側に適切に伝える必要があります。

病状又は病態像

  • 療養及び症状の経過(発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況)や予後の見通し、妄想・幻覚 などの異常体験や、自閉・感情の平板化・意欲の減退などの陰性症状(残遺状態)の有無
  • 陰性症状(残遺状態)が長期間持続し、自己管理能力や社会的役割遂行能力に著しい制限がある場合はその旨を記載

療養状況

  • 通院の状況(頻度、治療内容など)
  • 薬物治療を行っている場合は、その目的や内容(種類・量(記載があれば血中濃度)・期間)や服薬状況など
  • 通院や薬物治療が困難又は不可能である場合は、その理由や他の治療の有無及びその内容など
  • 入院している場合は、入院時の状況(入院期間、院内での病状の経過、入院の理由など)
  • 病棟内で、本人の安全確保などのために、常時個別の援助が継続して必要な場合

生活環境

  • 家族等の日常生活上の援助や福祉サ ービスの有無
  • 入所施設やグループホーム、日常生活上の援助を行える家族との同居など、支援が常態化した環境下では日常生活が安定している場合でも、単身で生活するとしたときに必要となる支援の状況

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精神の障害に係る等級判定ガイドライン

障害年金の申請(請求)では「精神の障害用の診断書」を使用します。

診断書の裏面には「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」という評価項目があり、障害年金の審査では重視されています。

日常生活能力の判定

「日常生活能力の判定」とは、「日常生活の7つの場面」における制限度合いをみるものです。単身で生活した場合にどの程度(下記1〜4)の支障があるのか判定されます。
※ 単身で生活するとしたら可能かどうかで判断します。

適切な食事 配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど。
身辺の清潔保持 洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の掃除や片付けができるなど。
金銭管理と買い物 金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど
通院と服薬 規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるなど。
他人との意思伝達及び対人関係 他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるなど。
身辺の安全保持及び危機対応 事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。
社会性 銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続きが行えるなど。
1 できる
2 自発的に(おおむね)できるが時には援助や指導があればできる
3 (自発的かつ適正に行うことはできないが)助言や指導があればできる
4 助言や指導をしてもできない若しくは行わない

日常生活能力の程度

「日常生活能力の程度」とは、日常生活全般における制限度合いを評価するものです。

(1) 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
(2) 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
(3) 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
(4) 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
(5) 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

精神の障害に係る等級判定ガイドライン

精神の障害年金の認定において使用される「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、「精神の障害用」診断書の裏面の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」に応じて等級の目安が定められています。
具体的には、「日常生活能力の判定」の4段階評価について、障害の程度が軽い方から14の数値に変換され、その平均値が算出されます。この数値は、「日常生活能力の程度」の(1)~(5)と組み合わされ、最終的な等級の目安が確定されます。
ただし、この等級の目安はあくまで参考値であり、実際の等級は、診断書に記載されるその他の内容や病歴・就労状況等申立書などが総合的に評価されて決定されます。

【障害等級の目安の具体例】

例えば、下記のようなの評価の場合、日常生活能力の判定は、適切な食事「④」+身辺の清潔保持「③」+金銭管理と買い物「③」+通院と服薬「②」+他人との意思伝達及び対人関係「③」+身辺の安全保持及び危機対応「②」+社会性「③」)÷7=2.85が平均値となり、日常生活能力の程度の(3)と合わせて、等級の目安は「2級または3級」程度とされます。

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障害年金の申請(請求)の進め方

統合失調症で障害年金を申請(請求)する場合、手続きの進め方は次のようになります。

  1. 「初診日」を調べる。
  2. 受診状況等証明書取得する。
  3. 病歴・就労状況等申立書」作成する。
  4. 診断書(精神の障害用)」の作成を病院に依頼する。

具体的な手順はこちらのページで解説していますので、ご確認ください。

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統合失調症で障害年金を申請(請求)する際のポイント

ポイント1 初診と請求時の医療機関で傷病名が異なる場合

統合失調症の場合、初診時と請求時の医療機関で傷病名が異なることがよくあります。

「受診状況等証明書」の傷病名と統合失調症との関連が全く見られない場合、初診日の証明として認められない可能性がありますが、必ずしも完全に同じである必要はありません。

精神障害の場合、傷病名が変更されることは一般的です。ただし、統合失調症との関連が疑われる場合は、「病歴・就労状況等申立書」で傷病(発病)の経過を詳細に記載すると良いでしょう。

ポイント2 日常生活の状況が診断書に反映されていますか?

障害年金の審査では、診断書裏面の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の評価が重要です。これに基づいて等級のおおまかな目安が決まり、最終的な等級判定は診断書に含まれる他の要素も考慮されます。

月に数度の診察で日常の生活状況を適切に伝えていますか?例えば、症状が消失している際に受診をしていたり、医師の前では元気に振る舞ってしまうことはありませんか?

こうした状況では、診断書が実際の生活状況を正確に反映していない可能性があります。診断書を依頼する際は、医師に対して日常の生活状況を正確に伝えることが重要です。

ポイント3 病歴・就労状況等申立書で日常生活の困難さを申し立てていますか?

「病歴・就労状況等申立書」は、日常生活の困難さを伝えるための書類です。この書類の内容によって、不支給になる場合や等級が決まることもあります。

自身の日常生活がどのように困難になっているのかを考え、審査で考慮される項目び焦点をあて、慎重かつ詳細に記載していくことが大切です。

さらに詳しく >> 病歴・就労状況等申立書の記入方法

ポイント4 統合失調症で単身生活(独居)の場合は障害年金2級は難しい?

障害年金の2級の障害程度は、「日常生活に必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度」です。

統合失調症で単身生活(独居)の場合、「日常生活が単身で可能=日常生活は困難ではない」と見なされる可能性があります。例えば、家族や福祉サービスの援助を受けている場合(援助を受けなくても必要な状態の場合も含む)、その支援状況を申し立てると良いでしょう。さらに、単身生活(独居)になった理由やその時期なども記載すると、より詳細で理解しやすい情報になります。

ポイント5 統合失調症の場合就労していると支給されない?

就労していても障害年金を受給できる可能性はあります。ただし、統合失調症の場合、就労の事実のみによって日常生活能力が向上していると見られたり、障害状態が軽くなっていると判断されることがあります。

就労中に障害年金を申請(請求)する場合、障害認定基準に従い、仕事の種類や内容、就労状況、仕事場での援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを審査側に詳細に伝える必要があります。

さらに詳しく >>  障害年金「精神の障害」と「就労」の関係

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統合失調症で障害年金をサポートした事例集

弊所が担当させていただいた案件を一部ご紹介いたします。

初診日から40年後に障害年金を申請(請求)50代女性 統合失調症で障害基礎年金1級を受給

>> その他の統合失調症の方の障害年金事例集

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ご不安な方は障害年金の専門家への相談をしましょう

実際に障害年金を申請(請求)する際には、障害年金に関する知識を抑えた上で、年金事務所へ足を運び煩雑な処理を正しい手順で進めていく必要があります。

障害年金は複雑で一般の方には難しい点も多々あります。不安や分からないことがある場合は、障害年金を扱っている専門家(社会保険労務士など)に相談しましょう。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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