悪性新生物(がん)で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行

悪性新生物(がん)で障害年金を請求するために必要な障害認定基準、初診日の考え方、必要書類、診断書の注意点などを専門家が分かりやすく解説します。この記事では、悪性新生物(がん)での障害年金請求の重要ポイントをまとめました。

1. 悪性新生物(がん)の障害認定基準

障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 悪性新生物による障害」が定められています。

悪性新生物(がん)による障害は、組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果などを総合的に認定されますが、特に重視されるのが「一般状態区分(日常生活の制限度合い)」です。

1-1. 一般状態区分表と等級の目安

悪性新生物(がん)の障害等級は、主に以下の「一般状態区分表」のどの段階に該当するかによって判断されます。

区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの(例えば、軽い家事、事務など)
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

これらの区分を障害等級に当てはめると、おおよその目安は以下の通りです。

等級 状態の目安
1級
  • 著しい衰弱又は障害のため一般状態区分表の「オ」に該当するもの
2級
  • 衰弱又は障害のため、一般状態区分表の「エ」または「ウ」に該当するもの
3級
  • 著しい全身倦怠のため、一般状態区分表の「ウ」または「イ」に該当するもの

2. 初診日の考え方と障害認定日

2-1. 悪性新生物(がん)における初診日

障害年金における初診日とは、「障害の原因となった傷病(がん)のために、初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日」のことをいいます。悪性新生物(がん)の場合、以下のような日が初診日となるケースが一般的です。

  • 「胃が痛い」「しこりがある」「血便が出た」などの自覚症状で内科や専門科を受診した日
  • 会社の健康診断や人間ドックなどで影や異常値を指摘され、精密検査のために医療機関を受診した日
  • 当初は別の病気(胃炎や肺炎など)と診断されていたが、後にそれががんであると判明した場合、最初の症状で受診した日

2-2. 障害認定日について

初診日から1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。

  • 障害認定日に既に重篤な状態であれば
    障害認定日請求(遡っての請求)が可能です。
  • 1年6か月時点では症状が軽く、その後、転移や再発、副作用などで悪化した場合は
    事後重症請求として、現在の状態に基づいて請求します。

ただし、1年6か月経過前に特例として認定日が到来する場合があります。

【認定日の特例(例)】

  • 人工肛門(ストマ)を造設した場合:手術日から6か月経過した日
  • 喉頭全摘出をした場合:摘出した日
  • 在宅酸素療法を開始した場合:開始した日

※これらが初診日から1年6か月以内にある場合、その日が障害認定日となります。

3. 障害年金請求に必要な書類

悪性新生物(がん)で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。

  • 障害年金請求書
    • 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険障害給付」
    • 初診日が20歳未満、20歳以上60歳未満の国民年金 → 「国民年金障害基礎年金」
  • 診断書(血液・造血器・その他の障害用・様式第120号の7)
    ※障害の部位によっては、呼吸器用、腎疾患用、肝疾患用など別の様式を使う場合があります。
  • 病歴・就労状況等申立書(初診日から請求日までの経過、日常生活の困難さ、就労状況などを記載)
  • 受診状況等証明書(初診医療機関)
  • 年金生活者支援給付金請求書

4. 診断書の重要ポイント

障害年金の審査では、診断書が最も重要な書類といっても過言ではありません。悪性新生物(がん)の場合、次の点がポイントになります。

4-1. 自覚症状と他覚所見、そして一般状態区分

医師に対して、単に検査数値だけでなく、日頃の生活でどれくらい困っているかを正確に伝えることが重要です。

  • 抗がん剤等の副作用:倦怠感、嘔吐、末梢神経障害などの副作用で日常生活に支障が出ている場合、その旨を記載してもらう必要があります。
  • 一般状態区分:前述の「ア~オ」の評価が等級決定に直結します。診察室では気丈に振る舞ってしまいがちですが、「家では横になっていることが多い」「家事は家族に手伝ってもらっている」といった実態を医師に伝え、診断書に反映してもらうことが大切です。
  • 検査成績:腫瘍マーカー、血液検査(ヘモグロビン、アルブミン等)、画像所見などが正確に記載されているか確認しましょう。

4-2. Karnofsky Performance Scale (KPS)との整合性

悪性新生物(がん)の場合、全身状態の評価に「Karnofsky Performance Scale(KPS)」という指標が使われることがあります。

障害年金の診断書にある「一般状態区分表(ア~オ)」は、このKPSと密接な相関関係があります。もし主治医が障害年金の記載に慣れていない場合でも、普段の診療で判定されているKPSの数値を目安に一般状態区分を判定してもらうと、実態とのズレが少なくなります。

一般状態区分 KPS (%) 状態の定義
100 正常
90 軽い臨床所見はあるが、正常の活動可能
80 常に臨床所見があるが、努力して正常の活動可能
70 自分自身の世話はできるが、正常の活動、労働することは困難
60 自分に必要なことはできるが、時に介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療および看護が必要
40 あまり動けず、適切な医療及び看護が必要
30 まったく動けず入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している

5. 悪性新生物(がん)で障害年金を請求した事例集

当事務所による悪性新生物(がん)で障害年金を請求した事例の一部をご紹介します。各事例のリンクをクリックすると、詳しい解説ページへ移動します。

50代女性 抗がん剤の副作用(全身倦怠感)で障害厚生年金2級を受給

障害等級:障害厚生年金2級/事後重症請求

概要:S状結腸癌の手術後、腹膜および卵巣への転移が発覚。治療のための抗がん剤投与により、激しい全身倦怠感や末梢神経障害(手足の痺れ・歩行困難)といった重篤な副作用が生じ、終日臥床の状態となった事例です。

40代女性 乳がん・子宮卵巣全摘出による全身倦怠感が持続

障害等級:障害基礎年金2級/事後重症請求

概要:乳がんの治療および子宮・卵巣の全摘出手術を経て、重度の体調不良により就労が困難になった相談者が、社労士のサポートにより障害基礎年金2級を受給できた事例です。

6. 最後に

本ページの内容は、悪性新生物(がん)で障害年金を請求する方法をまとめたものです。

障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は

  • 最寄りの年金事務所での最新案内
  • 厚生労働省・日本年金機構の最新リーフレット
  • 障害年金に詳しい社会保険労務士

などに確認しながら進めることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。

最終更新日:

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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