1型糖尿病で障害年金を請求する方法を解説 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求を代行

1型糖尿病により、日常生活や労働に著しい支障が出ている場合、障害年金を受給できる可能性があります。 障害年金を請求するためには、初診日や疾病の状態などの情報が求められ、正確に手続きを行うことが大切です。ここでは、1型糖尿病の障害認定基準、必要な書類や手順、注意すべきポイントについて詳しく解説いたします。

1型糖尿病の障害認定基準

糖尿病障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)に定められており、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」が定められています。ここでは、障害認定基準の中から、「代謝疾患による障害」の認定基準を抜粋してご紹介します。

1型糖尿病による障害の程度は、合併症の有無及びその程度、代謝のコントロール状態、治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定されます。

1型糖尿病については、必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難なもので、次のいずれかに該当するものを3級と認定されています。

障害年金3級に該当する状態

内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時又は随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL 未満を示すもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの
意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1 回以上あるもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの
インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシス又は高血糖高浸透圧症候群による入院が年1 回以上あるもので、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

上記のような状態で、検査日より前に90 日以上継続して必要なインスリン治療を行っていることが確認できた者に限って認定されます。なお、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定されます。

一般状態区分表

区分 一般状態区分
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

障害年金の請求手順

1型糖尿病の障害年金の請求手続きは、以下のような手順で進めます。

  1. 初診日を調べる
  2. 年金事務所などで「保険料納付要件」を満たしていることを確認する
  3. 受診状況等証明書を取得する
  4. 病歴・就労状況等申立書を作成する
  5. 診断書を取得する
  6. その他必要書類を揃える
  7. 年金事務所などに年金請求書を提出する

受診状況等証明書の取得

障害年金を受給するには、障害の原因となる傷病が発生する前に、年金保険料を一定期間納付していることなどが支給要件となるため、初診日が非常に重要になります。

「初診日」は自己申告ではなく、客観的な資料によって証明します。初診日を客観的な資料で特定できない場合でも、他の資料を提出することで認められる可能性があります。

重要なことは、初診日が曖昧なまま障害年金を請求しないことです。

「初診日」の取り扱いについては、以下のリンク先に掲載していますのでご覧ください。

>>> 障害年金 受診状況等証明書(初診日証明)の取得方法

>>> 障害年金 初診日の証明ができないとき

障害年金の初診日に関する調査票

1型糖尿病で障害年金を請求する場合、初診日に関する調査票(以下、「調査票」)の提出を求められることがあります。

「調査票」には、倦怠感・身体の不調・口渇等を自覚した時期、その時の状態、健康診断等で尿に糖が出たことを指摘されたことがあるか、などを記述する資料です。

「症状が悪いということをアピールしたい」からと、事実と異なることを記入する必要はありません。

病歴・就労状況等申立書の作成

「病歴・就労状況等申立書」は、診断書や受診状況等証明書とともに、障害の認定において非常に重要な書類です。この書類は、診断書などが一時的な状況を示す「点」であるのに対し、発病から現在までの流れを記載する「線」の役割を持ちます。

発病から初診に至るまでの経緯や初診から現在までの治療経過、現在の病状や日常生活の状況などを具体的に記載することが重要です。原則として5年ごとに区切って記載しますが、転院歴がある場合は通院した病院ごとに記載します。専門用語ではなく、具体的なエピソードや個別の状況を記載していきます。

初診の医療機関で「受診状況等申立書」を取得できなかった場合は、「病歴・就労状況申立書」も非常に重要になりますので、初診日頃の状況を丁寧に記載します。

さらに詳しく >>>  病歴・就労状況等申立書の記入方法

診断書を取得する

1型糖尿病で障害年金を請求する際に使用する診断書は「診断書(腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用」なります。

障害認定の際に必要とされるCペプチド値の記載漏れはないか必ず確認します。一般状態区分が(イ)以上になっているか確認しておきましょう。

 

障害等級2級の認定

障害認定基準には、「必要なインスリン治療を行ってもなお血糖のコントロールが困難なもので、日常生活に影響を受けている場合に3級」とされています。さらに、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定されることもあります。

ただし、2級以上の認定を受けるためには、自己対処等の必要も含めた日常生活の制限度合いや、糖尿病の特性、血糖コントロールの状態、症状、労働の状況などを含む具体的な日常生活状況等を詳細に申し立てる必要があります。日本年金機構が公開している「医師照会様式」を参考に申し立てるのも一つの方法といえます。

とはいえ、実際には2級以上に認定されるのは困難な状況といえます。そのため、審査請求や再審査請求、場合によっては裁判まで行う必要が生じることもあります。

1型糖尿病で障害年金の支給が認定された事例

弊所のサポートによって、障害年金の支給が認定された事例の一部をご紹介します。

障害年金を請求する際は、必要な知識を把握した上で、年金事務所に足を運び、正しい手順で手続きを進める必要があります。

障害年金の手続きは複雑で、一般の方には分かりにくい点も多いため、不安や疑問がある場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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