慢性腎不全の初診日は25年前 診察券と生命保険診断書で初診日を確定 | かなみ社会保険労務士事務所

| 兵庫県伊丹市

相談者の状況

ご夫婦で初回無料相談に来られました。

定期的に血液検査と尿検査を受けており、検査結果を確認したところ、血清クレアチニン値が軽度異常(3mg/dl〜5mg/dl未満)となっており、障害厚生年金3級に相当するものでした。慢性腎臓病の原因が糖尿病であり、糖尿病の初診日証明は困難であると考えて、障害年金の申請(請求)を受任することにしました。

受任から申請(請求)までに行ったこと

障害年金では「糖尿病と腎不全は因果関係あり」とされ、糖尿病で最初に医師の診察を受けた日を初診日として扱われるため、受診歴を整理することから始めました。

糖尿病から慢性腎臓病の受診歴

医療期間名 治療期間 病名
A病院 1996年10月14日 〜 2001年 糖尿病
B病院(廃院) 2001年       〜   2007年5月24日 糖尿病
C病院 2007年5月25日 〜   2008年8月8日 糖尿病
D病院 2008年8月9日  〜 通院中 糖尿病
E病院 2017年7月25日   〜 通院中 腎不全

受診状況等証明書の取得

申請(請求)人の糖尿病の初診日は約25年前の1996年頃でした。A病院とB病院のカルテは既に廃棄されており、受診状況等証明書はC病院で取得することができました。C病院の受診状況等証明書には、B病院からの紹介状が添付されていましたが、糖尿病の発病時期や初診日(時期)は確認することができません。

診療録の開示請求

C病院の診療録等に初診時期が記載されていないか確認するため、C病院の診療録開示請求を行ったところ、C病院から転院先のD病院にあてた紹介状が保管されていました。

そこには「28歳で糖尿病を指摘」「B病院から紹介されたこと」「B病院の前はA病院を受診していたこと」などが記載されています。これらはD病院への転院時に聴取された内容であり、障害年金の申請(請求)よりも約15年前のことです。障害年金の申請(請求)のことなど考えるような時期ではなかったため、この資料によって初診日が認められる可能性が高まりました。

糖尿病の初診時期を特定!

初診日分かりますか

C病院のカルテ開示によって初診時期が「28歳」であると特定できたのですが、さらに難解な問題がでてきました。申請(請求)人が28歳であった1年間は「国民年金」と「厚生年金」の加入期間が混在している年でした。障害年金はどちらの制度で申請(請求)するか明確にする必要があったのです。

申請(請求)人の障害の程度は3級程度になることが予測されたため、障害厚生年金として申請(請求)する必要があり、初診日を特定する必要がでてきたのです。A病院の主治医の「第三者の申立書」や健康保険組合の記録などを調査したものの、情報を得ることができません。

申請(請求)人の実家に資料があるか確認してもらったところ、A病院の診察券が自宅から発見され、診察券の裏面には「発行日:1996年10月4日」と記載されていました。ようやく糖尿病の初診日が特定できたのです!

結果

「初診日不明」として却下されました。初診日を特定できたことで障害年金を申請(請求)しており、このような結果になるとは考えておらず、日本年金機構が出した決定(却下)に不服申し立てをすることになりました。

保有個人情報開示請求を行う

審査請求を行うにあたり、審査状況を確認するために個人情報開示請求を行ったところ、本人申立初診日を「1996年10月4日」とみてよいかという質問に、「始期を28歳誕生日 終期を29歳の誕生日前日となる。この期間は制度混在の期間であり、厚生年金期間中に初診日があると特定できない」と記載されていました。診察券の日付は考慮されていないということです。

初診日を争って審査請求を行う

診察券の交付日が初診日を特定する資料とされなかったことに不服を申し立て、さらに「1996年10月4日」を特定する資料がないか確認することにしました。A病院を受診した際に、食事指導とインスリン治療のために1ヶ月間入院していたことに着眼し、請求人に生命保険の入院給付金を請求していないか確認したところ、〇〇〇生命保険で入院給付金を受け取っていました。〇〇〇生命保険に確認すると、入院給付金の診断書が保管されており、「1996年2月 健康診断にて糖尿病の疑いを指摘」「1996年9月全身倦怠感」「1996年10月4日初診」と記載されていました。

審査請求から約6ヶ月後、社会保険審査官から「日本年金機構が処分を変更した」「1996年10月4日を初診日とし、厚生年金を支給する」という連絡が入りました。

最終結果

年金種類と等級;障害厚生年金3級

年金額:年額586,000円

その他

>>> 障害認定基準 腎疾患による障害

>>> 障害年金 初診日の証明ができないとき

>>> 保有個人情報開示請求の方法

>>> 障害年金の不服申立て( 審査請求・再審査請求)の流れとポイントを解説

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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