60代男性 脳出血による左上下肢の麻庫で障害基礎年金2級が決定 審査請求で1級に変更 | かなみ社会保険労務士事務所

| 兵庫県川西市

相談者の状況

自宅で嘔吐、尿失禁した状態で倒れているところを発見されました。頭部CT検査を受けたところ、右被殻出血がわかり、頭蓋内血腫除去の緊急手術を受けました。
左上下肢の麻庫が残存していたため、作業療法と理学療法を毎日続けましたが、左上下肢の麻痺は改善することはなく、日常生活全般において著しい支障を受けていました。

受任から申請(請求)までに行ったこと

救急搬送されてから7年後に障害年金の申請(請求)を行うことになりました。

障害認定基準では「脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6か月経過した日以後に、医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど認められないとされた場合は、その時を障害認定日とする」とされています。

申請(請求)人は、救急搬送された日から6ヶ月が経過した時点で、リハビリ病院にて身体障害者手帳用の診断書を作成してもらっていたため、その時点の状態を元に障害年金用の診断書を記載してもらうことができました。申請(請求)時点の障害の状態を記載してもらえる病院はなかったため、高血圧の管理のために通院していた病院に相談し、診断書作成が可能な病院を紹介してもらうことになりました。

障害の状態は、左上肢と左下肢の筋力は「消失」しており、日常生活における動作の障害の程度は次のようになっていました。

結果

年金種類と等級;障害基礎年金2級

年金額:年額780,00円 遡及金額4,000,000円(5年遡及)

障害の等級に納得できずに審査請求を行う。

障害認定基準では「一上肢及び一下肢の用を、全く廃したもの(日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいう。)を1級とされています。

申請(請求)人の状態は上記基準と同程度と考えられ、障害等級は1級になると思っていましたが、審査では2級と決定されていました。このため、障害の等級に不服を申し立てるために審査請求を行うことにしました。

審査請求で棄却される

審査請求から約4ヶ月後、「審査請求を棄却する」との決定書が届きました。

棄却の理由は、「請求人は、下肢補装具とT字で歩行しているとされているところ、左手の握力が0kgである者が、T字を握れるとは考え難く、また、筋力の消失とは、いかなる体位でも関節の自動が不能な場合であるから、左下肢の筋力が全て消失しているのであれば、下肢補装具とT字杖を使用してでも左足を動かすことができないわけであり、下肢補装具とT字を使用して歩行できるとは考え難い。これらのことを考慮すると、上記審査資料の筋力(握力を含む。)は本件の判断の基礎とすることはできず、また、請求人はT字杖を握るだけの筋力があるわけであるから、資料の診断書の「つまむ (新聞紙が引き抜けない程度)」、「握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)」が「一人で全くできない」との評価も本件の判断の基礎とすることはできないし、請求人の関節の他動可動域が、参考可動域の2分の1以下に制限されているのは、肘関節の屈曲・伸展の合計のみであることからすると、顔に左手の手のひらをつける動作が一人で全くできないとも考え難い。そうすると、少なくとも、請求人の左上肢の日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態であるとは判断できない」とされていました。

再審査請求

審査請求の棄却決定を受け、すぐに再審査請求を行いました。

審査請求時に主張したことに加え、請求(申請)人の傷病は脳出血であることから関節の他動可動域は障害の程度の評価にはならないこと、日常生活における動作の障害の程度は補助用具を使用しない状態で評価されるべきであり、申請(請求)人の障害は、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態になっていることなどを主張しました。

最終結果

公開審理の直前に社会保険審査会調整室から「日本年金機構が処分を変更した」との連絡が入りました。

年金種類と等級;障害基礎年金1級

年金額:年額975,000円

その他

>>> 障害認定基準  肢体の機能の障害

>>> 脳梗塞や脳出血による肢体障害で障害年金を申請(請求)する方法やポイントを解説

>>> 障害年金の不服申立て( 審査請求・再審査請求)の流れとポイントを解説

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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