知的障害(精神遅滞)で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所

知的障害で障害年金を請求するために必要な障害認定基準、初診日の考え方、必要書類、診断書の注意点などを専門家が分かりやすく解説します。この記事では、知的障害での障害年金請求の重要ポイントをまとめました。

1. 知的障害の障害認定基準

障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 精神の障害」が定められています。

知的障害では、知能指数(IQ)のみで判断されるわけではなく、日常生活能力(食事、清潔保持、金銭管理、対人関係など)がどの程度制限されているかが重要になります。

1-1. 各等級の目安

等級 障害の状態の目安
1級
  • 日常生活が困難で常時援助を必要(食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要で、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難な状態)
2級
  • 日常生活にあたって援助が必要(食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られる状態)

※就労と等級の関係
「働いているから2級にならない」わけではありません。就労系障害福祉サービス(A型・B型)や障害者雇用制度を利用し、周囲の援助や配慮を受けながら働いている場合は、2級に認定される可能性があります。

2. 初診日の考え方と障害認定日

2-1. 知的障害における初診日

通常、障害年金では「初めて医師の診察を受けた日」を証明する必要がありますが、知的障害は先天性の障害であるため、「初診日は生まれた日(出生日)」として扱われます。

  • 初めて精神科や小児科を受診した日がいつであっても、初診日は「出生日」となります。
  • 初診日は「出生日」になるため、初診日の証明書類(受診状況等証明書)は原則として不要です。

2-2. 障害認定日について

初診日が出生日のため、「20歳の誕生日」が障害認定日となります。

  • 20歳到達時に請求する場合:
    20歳の誕生日の前後3か月以内の診断書で請求します(障害認定日請求)。
  • 20歳を過ぎてから請求する場合:
    現在の症状で請求します(事後重症請求)。20歳時点の診断書が取得できれば、最大5年分遡って受給できる可能性もあります。

※20歳前傷病による障害基礎年金
知的障害は「20歳前傷病」に該当するため、保険料の納付要件は問われません。ただし、ご本人に一定以上の所得がある場合は支給停止となる所得制限があります。

3. 障害年金請求に必要な書類

知的障害で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。

  • 障害年金請求書(国民年金障害基礎年金)
  • 診断書(精神の障害用・様式第120号の4)
  • 病歴・就労状況等申立書
    • 出生から現在までの成育歴、就学状況、就労状況を詳細に記載する必要があります。
  • 年金生活者支援給付金請求書

4. 診断書の重要ポイント

障害年金の結果は、診断書の内容に大きく左右されます。知的障害で障害年金を請求する際に重要となるポイントを押さえておきましょう。

4-1. 診断書の記載項目

診断書では、次のような記載項目があります。

  • 傷病名
  • 出生からの生い立ち
  • 生活環境・福祉サービスの利用状況
  • 日常生活能力の程度・日常生活能力の判定
  • 就労状況

4-2. 日常生活能力の程度・判定

精神の障害の認定では、診断書の裏面にある「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」の記載が等級の目安として重視されています。

  • 日常生活能力の判定」は、食事・身辺の清潔保持・金銭管理と買い物・通院と服薬・対人関係・危機対応・社会性の7項目について、どの程度の援助が必要か4段階で評価されます。
  • 日常生活能力の程度」は、7項目(食事や掃除など)を総合して、「全体としてどのぐらい障害があるのか」 を評価されます。

診断書の日常生活能力の判定と程度の記載例

5. 知的障害で障害年金を請求した事例集

知的障害で障害年金を請求した事例をまとめています。

20代男性 週5日フルタイム勤務で2度不支給からの逆転!

障害等級:障害基礎年金2級/事後重症請求

概要:障害者雇用で週5日フルタイム勤務(月収約15万円)をしていたため、「就労能力あり」とみなされ、本人請求・他社労士による請求で2度不支給となっていた事例。職場への訪問ヒアリングを行い、周囲からの手厚い援助や配慮の実態を詳細に証明した結果、障害基礎年金2級の受給になりました。

20代男性 20歳8ヶ月時の診断書で遡及請求

障害等級:障害基礎年金2級/障害認定日請求(遡及請求)

概要:20歳時点(認定日)の受診歴がなく、本来なら遡及請求が難しいケース。しかし、20歳8ヶ月時点の心理検査結果により、障害の状態が変わらないことを主張することで、障害基礎年金2級・4年分の遡及受給となりました。

6. 最後に

本ページの内容は、知的障害で障害年金を請求する方法をまとめたものです。

知的障害の申請では、「出生から現在までの長い病歴」をまとめることや、「日常生活の困難さ」を医師に正確に伝えることが重要になります。

実際に障害年金を請求される際は、

  • 最寄りの年金事務所での最新案内
  • 市役所の障害福祉課
  • 障害年金に詳しい社会保険労務士

などに確認しながら進めることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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