双極性障害で障害年金を請求する方法 | かなみ社会保険労務士事務所/障害年金請求)を代行

1. 双極性障害の障害認定基準

障害年金に該当する障害の状態については、国民年金法施行令(別表)および厚生年金保険法施行令(別表第1・第2)があり、具体的な基準として「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(精神の障害)」および「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が定められています。

1-1. 精神の障害の等級の目安

精神の障害は、日常生活能力(食事・清潔保持・金銭管理・対人関係など)や生活状況就労状況などから総合的に判断されます。双極性障害では、概ね次のような状態が目安となります。

等級 状態の目安
1級
  • 身の回りのこと(食事・清潔保持・金銭管理など)がほとんど自力で行えず、常時の援助が必要
2級
  • 身の回りのこと(食事・清潔保持・金銭管理など)に著しい支障があり、他者の援助が必要な状態
3級
  • 気分の波により、労働に制限を受けている状態

ポイント
双極性障害は、一時点の状態だけではなく、症状の経過や日常生活活動等の状態を考慮されます。

2. 初診日の考え方と障害認定日

2-1. 初診日について

障害年金における初診日とは、「障害の原因となった傷病(双極性障害)のために、初めて医師(または歯科医師)の診療を受けた日」のことをいいます。

双極性障害の場合、最初から「双極性障害」と診断されているとは限らず、次のようなケースが初診日となることが多くあります。

  • 抑うつ気分、不眠、意欲低下などの症状で心療内科や精神科を受診した日
  • イライラ、怒りっぽさ、多弁、多動などの症状で精神科を受診した日
  • 身体症状(動悸・息苦しさ・頭痛など)で内科を受診した日

初診日にどの年金制度(国民年金か厚生年金)に加入していたか、保険料納付要件を満たしているかなどを確認するため、初診日は非常に重要です。「受診状況等証明書」などで証明する必要があります。

2-2. 障害認定日について

障害年金では、初診日から1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。

  • 初診日から1年6か月を経過した時点の障害の程度で、障害等級に該当するかを判定
  • その時点で該当しない場合、「事後重症」として、請求時点の状態で障害等級に該当するかを判定

3. 障害年金請求に必要な書類

双極性障害で障害年金を請求する場合、一般的には次のような書類が必要です。

  • 障害年金請求書
    • 初診日に厚生年金加入 → 「国民年金・厚生年金保険 障害給付」
    • 初診日が20歳未満、または20歳以上60歳未満で国民年金加入 → 「国民年金 障害基礎年金」
  • 診断書(精神の障害用・様式第120号の4)
  • 病歴・就労状況等申立書(病状の経過と生活・仕事への影響を時系列で記載)
  • 受診状況等証明書(初診医療機関で作成)
  • 年金生活者支援給付金請求書

4. 診断書の重要ポイント

障害年金の結果は、診断書の内容に大きく左右されます。双極性障害で障害年金を請求する際に重要となるポイントを押さえておきましょう。

4-1. 診断書の記載項目

診断書では、次のような記載項目があります。

  • 傷病名
  • 発病時期・初診日・発病からの病歴
  • 病状の程度や症状・処方薬
  • 生活環境・福祉サービスの利用状況
  • 日常生活能力の程度・日常生活能力の判定
  • 就労状況

4-2. 日常生活能力の程度・判定

精神の障害の認定では、診断書の裏面にある「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」の記載が等級の目安として重視されています。

  • 日常生活能力の判定」は、食事・身辺の清潔保持・金銭管理と買い物・通院と服薬・対人関係・危機対応・社会性の7項目について、どの程度の援助が必要か4段階で評価されます。
  • 日常生活能力の程度」は、7項目(食事や掃除など)を総合して、「全体としてどのぐらい障害があるのか」 を評価されます。

ポイント
医師に診断書を依頼する際には、日常生活状況や困っていることを具体的に伝えるメモを用意しておくとよいでしょう。

 

4-3. 就労状況

障害年金の請求時に就労している場合は、就労状況を具体的に記載されていることが重要です。

  • 就労先・雇用形態(一般雇用・障害者雇用)
  • 就労時間(フルタイムか短時間か)
  • 職場での配慮(簡単な作業への配置転換、残業免除、在宅勤務など)の有無
  • 仕事でのミス、対人トラブルなどの有無
  • 欠勤や遅刻・早退の頻度、休職・復職を繰り返していないか

無理をして就労を続けている場合でも、実際にはどのような支援や配慮がなければ働けない状態なのかを医師にきちんと伝えることが重要です。

5. 双極性障害で障害年金を請求した事例集

双極性障害で障害年金を請求した事例をまとめています。気になる事例のリンクをクリックすると、詳しい解説ページへ移動します。

40代女性 医療機関の領収証と傷病手当金の支給申請書の写しで初診日を証明

障害等級:障害厚生年金2級/障害認定日請求

概要:発病から約15年が経過しカルテの廃棄により初診日の証明が困難だったが、自宅に保管していた当時の領収証と傷病手当金支給申請書の写しを組み合わせることで初診日を特定し、障害厚生年金2級の受給に成功した事例です。

6. 最後に

本ページの内容は、双極性障害で障害年金を請求する方法をまとめたものです。

障害年金の制度・診断書様式・運用は改正されることがありますので、実際に障害年金を請求される際は

  • 最寄りの年金事務所での最新案内
  • 厚生労働省・日本年金機構の最新リーフレット
  • 障害年金に詳しい社会保険労務士

などに確認しながら進めることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供であり、特定の方の受給権や等級を保証するものではありません。ご自身のケースについては、必ず年金事務所や専門家にご相談ください。

投稿者プロフィール

松田康
松田康社会保険労務士 (障害年金専門家)
かなみ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 27090237号
年金アドバイザー
NPO法人 障害年金支援ネットワーク会員

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