障害認定日の診断書は記載を拒否され、事後重症請求で障害年金を申請(請求) | かなみ社会保険労務士事務所
| 兵庫県川西市
初診時までの状況
幼少期から対人関係は希薄。家族を含めて誰とも話をしないなどの緘黙傾向がみられた。幼稚園では登園を嫌がって毎日のように泣きじゃくり、グループ行動ができず、皆が運動会をしている中で、一人だけ座り込んで参加しなかった。
就学後も緘黙で、他者と交流がなく、学習も不振で不登校傾向だった。
高校を中退後にアルバイトを始めるが続かず、接客や電話応対時に注意されることが多かった。
この頃から気分は不安定となり、希死念慮からリストカットを行ったり、過食と嘔吐を繰り返すなど、精神状態は非常に不安定になっていた。
その後、「まったく知らない土地なら変われるかもしれない」「自分の性格を変えたい」と、接客業でアルバイトを始めるが、対人恐怖感が強く、夜眠れないようになった。同僚から話しかけられると、急に泣き出してしまうなど、情緒は不安定になり、再び自殺企図を繰り返すようになった。
婚姻後、出産育児がうまくいかなかったが、実親に頼ることはなく、育児に孤立していた。ママ友交流も負担で、早朝の誰もいない時間帯に子どもを公園に連れて行き、日中は自宅で引きこもり、ほとんど外に出ることがなかった。
A心療内科を受診
子どもが幼稚園に入園することを考えると、不安がさらに大きくなった。あまりにもうつ状態が酷くなり、夫にA心療内科へ連れて行かれた。
初診時の診察で、幼少期から集中力不足や過集中の問題があることが分かり、心理検査を行い、注意欠陥・多動症が判明した。
薬物療法が開始されるが、胃部不快の症状が特続。胃部不快感は服薬とは無関係だったが、服薬継続を拒否し、初診から約3ヶ月で受診は中断することになった。
約1年間の受診中断後にB心療内科を受診
第2子を妊娠。精神状態も体調も非常に悪く、寝転びながら上の子どもの面倒を見ていた。夫の仕事が忙しくて頼ることができず、なんとかしなければと気力を振りしぼるが、何もできない時もあり、自分で自分を責めてどんどん気分が落ち込んでいた。アルコールやたばこに依存するようになり、体調がよい日はほとんどなくなっていた。
第2子を出産後にB心療内科を受診。 定期的に通院して精神療法と薬物療法を受けるようになる。
この時期も体調は非常に悪く、寝転びながら子どもの面倒をみていた。誰にも子育てを頼ることができず、気力を振りしぼって掃除や洗濯、料理などをしようとするが、なかなかできなかった。自分で自分を責めてどんどん気分が落ち込んでいた。子どもから「外に遊びに行こう」と言われる時もあったが、人に会うのが怖く、朝早くに公園に連れて行き、公園に他の子どもが来ると帰るようにしていた。
障害年金の申請(請求)時はBクリニックからC心療内科、Dクリニックへと転院。Dクリニックで発達検査を受けたところ、自閉症スペクトラム障害、気分変調性障害であると診断されていた。
障害認定日の診断書を依頼するが…
障害認定日とは障害の状態を定める日のことで、精神の障害の場合「その障害の原因となった病気についての初診日から1年6ヶ月を過ぎた日」とされている。本件の場合、A心療内科の初診日から1年6ヶ月時が障害認定日であり、遡及請求を行う場合は「初診日から1年6ヶ月〜1年9ヶ月」の診断書が申請(請求)で必要とされている。A心療内科の初診日から1年6ヶ月経過時はB心療内科を受診していた時期であったため、遡及請求が可能であると考え、診断書の依頼を行ったが、医師は診断書の作成を拒否された。診断書が記載できない理由は「わずか6ヶ月間の受診であること」「カルテの内容だけで診断書を作成するのは困難」というものだった。このため、依頼者と夫にB心療内科を受診してもらい、直接診断書の依頼をしてもらったが、やはり同じ理由で拒否され、遡及請求は諦めざるをえなかった。
広汎性発達障害・気分変調症で障害年金を申請(請求)
請求時の状況は、自宅に引きこもって臥床がちの生活になっていた。対人交流への不安感、コミュニケーションのズレ、集中困難や不器用さから自責感や自己否定感が強くなり、希死念慮、自殺企図もみられている状態だった。診断書の日常生活能力の判定の平均は3.57 日常生活能力の程度は(4)とされ、障害の目安は「2級」、日常生活は夫の援助がないと維持できず、就労は不能とされていた。
障害基礎年金2級が決定される
障害年金の申請(請求)から約3ヶ月後に障害基礎年金2級の年金証書が送付された。
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